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全国各地の商店街活性化の事例から、「商店街活性化のヒント」になるノウハウをご紹介します! 商店街支援ノウハウ

 

Profile

河合陽子さん
東京都商店街振興組合連合会 広報課長、中小企業診断士。東京都商店街振興組合連合会の機関紙『商店街ニュース(毎月発行)』の企画、取材、執筆を担当する。日々、都内を歩き回り、店主らの想いを記事にして届けている

小此木良介さん
一般社団法人 全国信用金庫協会 専務理事。全国の信用金庫の健全な発展と社会的使命を果たすために設立された公益性をもつ金融団体の専務理事として、信用金庫や中小企業の成長、発展を支える活動を継続している

桑島俊彦

株式会社 全国商店街支援センター 代表取締役社長。全国商店街振興組合連合会 理事・最高顧問、東京都商店街振興組合連合会 理事長。その他、要職を歴任。活力ある地域づくりに注力。世田谷で化粧品店を営む店主でもある


商店街と信用金庫はいわば「親戚同士」


小此木良介さん

河合  
小此木さんが協会の専務理事を務められる信用金庫(以下、信金)は協同組合組織ということで、個店の集合体である商店街とも似通ったところがあると思います。

小此木 銀行がなく、預金や融資の機能がなかった地域に、地域の人たちだけでつくったのが信金の始まりです。地域に生まれ、地域とともに育ってきたという点では、確かに商店街と一緒なのではないでしょうか。

桑島  「地域商店街活性化法」という法律ができて、商店街も最近は「商店街は地域コミュニティの担い手」という色合いが濃くなってきました。お互い、地域に根差した経営理念をもっているという点においては、信金と商店街は「親戚同士」と言えるかもしれませんね。

 


外回り訪問とともに地域のニーズを掴む

河合  信金も商店街も、経済面だけではなく、近年は社会面での地域貢献を期待されています。地域の中で商店街が担うべき具体的な役割について、まずは桑島さんにお聞きしたいです。

桑島  まず、ハード面では商店街をバリアフリー化し、街全体のユニバーサルデザインにつなげていく。誰にとっても住みやすい街をつくることです。また地域の伝統を後世に伝え、時に新たに創造していく「文化の担い手」の役割も期待されています。ただ、実現するためには商店街単体だけでなく、他の商店街や、それこそ信金とも連携して、地域で大きな集合体をつくっていく必要があるでしょう。

河合  実際、信金と商店街は共同でさまざまな社会貢献事業を行っています。たとえば「買い物弱者対策」として、宅配サービスを共同実施されています。

小此木 神奈川県の湘南信用金庫ですね。この地域は坂道が多く、高齢者が買い物にご苦労されていました。そこで、商店街と信金が話し合って、カタログ販売のような形で街まで買い物に出なくても済む仕組みをつくりました。地域の課題は千差万別ですし、時代によっても変わります。いま、何が一番求められているのか、地域の人々に聞くことから始めるべきです。

河合  とはいえ、負担ばかりでは持続していくことが難しくなると思います。こうした取組みを行うことで、業務上のメリットはあるのでしょうか?

小此木 一番は地域の方々とつながれること。昔は定期積金、いわゆる月掛けというものがあり、信金の職員が各お宅に訪問させていただく機会が多かったのですが、最近は少なくなってしまいました。そこで、信金の渉外係が商店街の〝御用聞き〞のような形で伺えば、商店街の売上にもつながりますし、我々もその場で資産などに関するご相談を受けることができます。

桑島  信金がよく仰っている〝つなぐ力〞そのものですよね。商店街の場合、御用聞きのような事業は、補助金がついているうちはいいんですが、補助期間は通常3年位で終了して竜頭蛇尾になってしまう。以前、行政の支援を得て都内の商店街でも買い物弱者対策をやろうとしたのですが、なかなかうまくいかなかったんです。その時に信金とコラボしていたら、成功事例が出たかも知れませんね。

 

渉外訪問やポイントでお年寄りを見守り

桑島  いまも渉外の方がいる信金のネットワークは地域にとって大きな力になると思います。私が住む東京・世田谷区には65歳以上のひとり暮らし世帯が30%近くいます。たとえば、不安を抱える単身高齢者を渉外さんが訪ねて、ちょっとしたお手伝いをしていただくとか。

小此木 見守りサービス、安否確認みたいなことですか。確かにそういった役割も担えたら、社会的に意義深いですね。

桑島  実は私の商店街では商店街ICカードに見守りポイント機能を加えました。65歳以上でひとり暮らしの方がカードを持って、商店街のお店や信金の窓口に来店すれば、何も買わなくても1ポイントが付く。すると、その方が街に出て行動していることが把握できるわけです。もしひと月以上動きがなかったら商店街から行政に連絡し、担当者が動く仕組みになっています。信金がやっていることと、根っこは同じですよね。


桑島俊彦

 

若手店主と信金職員が経営塾で膝つめ議論

河合  地域活性化にあたっては、地域の未来を担う若手の人材を長期的に育成することも必要になります。信金は経営塾を開催し、人材を育成していますよね。

小此木 経営者や若者向けの経営塾を毎月のように行う信金は増えています。たとえば、岐阜県多治見市に本店を構える東濃信用金庫では、「とうしん創業塾」を開催し、事業計画、資金調達、開業準備などを学べる機会を提供しています。そこでは異業種との横のつながりも生まれ、交流が育まれています。

桑島  私がかかわる「東京都商店街大学」や「世田谷商人塾」といった勉強会も、これまで15回ほど実施しています。11520人の卒業生が出ますが、実はそのうち34人は信金の職員なんです。毎回優秀な人たちに参加していただき、ともに地域の未来について膝をつめて議論する場にもなっています。

小此木 他にも沖縄のコザ信用金庫では、地域を調査して長期的なビジョンをつくったり、商店街や取引先企業とまちづくり会社を設立しています。また、東濃信用金庫でも、まちづくり会社の設立に協力し、空き店舗でカフェや個店を開く動きなどをサポートしています。

 

祭りの“つなぎ資金”からコンパクトシティ形成まで

河合  地域の人づくりをして、組織をつくって事業化する。そんなサイクルが生まれつつあるわけですね。では、いざ事業を実施する時に必要な資金は、どのように調達していますか?

桑島  たとえば商店街でお祭りなどをやる時に、100%補助金が出るわけではありません。国の認定を受けたイベントでも助成を得られるのは3分の2くらい。残りは商店街の自己負担です。また、100%出るケースでも、お金を受け取るのは、半年から1年後。その間のつなぎ資金は、地域の信金からの融資によって賄われることが多いですね。また、補助金を得るには書類申請が必要ですが、商店街の人はこれが非常に苦手なんですね。そこで世田谷区では、信金の方にもお手伝いしていただいています。商店街の事業を推進するにあたり、非常に大きな力になってくれています。

河合  地域からお金を集めて、地域に再投資する—— 。まさに信金ならではの経営姿勢を体現するような取組みですね。

小此木 中央機関である信金中央金庫では、信金の地域活性化への取組みや地域の情報などを、信金間で共有できる
WEBを提供しています。そのなかのひとつに中小企業支援に関連する各種補助金を信金が確認できる仕組みもあり、信金はお客様が補助金などを有効に利用できるよう支援できます。また、ファイナンスの支援でいうと、鳥取県の米子信用金庫の事例も画期的です。当地では少子高齢化が進んでいて、ならばいっそ「シニア層、シルバー層を中心にした住宅を商店街がある中心市街地につくろう」となったんです。そのための費用を融資しています。商店街に住宅をつくると商店街も栄えていくし、人口の減少にも歯止めをかけられる。信金が街づくりに協力することは地域のため、商店街のため、ひいては自分たち自身のためにもなるわけです。

桑島  まさしくコンパクトシティの理想形ですよね。

 

商店街スタンプ5個で信金への来店客数が倍増

河合  地域のなかでお金を回す試みとしては、「商店街スタンプ」をとおして商店街と信金が連携している事例がユニークです。

桑島  '92年にスタートした、東京都世田谷区の昭和信用金庫烏山支店の取組みですね。同支店では来店したお客様に販促用のティッシュを配っていたのですが、これを烏山駅前通り商店街で使えるスタンプに変更したんです。ティッシュの代わりに、スタンプ5枚です。そのうち、10万円定期をしたら1万枚のスタンプが抽選で当たる「スタンプ定期預金」が始まりました。結果、スタンプをもらったお客様が商店街に足を運ぶようになりました。信金側にとってもメリットがあったようで、スタンプをもらえるならと預金する人が増えたそうです。これこそ、まさに共存共栄ですよね。

河合  連携によってウィン・ウィンな関係を築く好例ですね。

小此木  連携という点では大阪シティ信用金庫の事例も面白いですよ。ここは、地域の連携だけでなく、信金のネットワークで全国とつながる仕組みをつくっています。北海道や東北をはじめ、他地域の信金と連携し、各土地の物産品を提供しているんです。自治体とも連携した、先進的な取組みだと思います。

桑島  地域の文化を広げることは重要ですね。世田谷区でも昭和信用金庫と共同で「Tokyo三つ星バザール」と銘打ったイベントを行っています。世田谷の和洋菓子など60店舗の逸品を集め、新宿駅西口広場で2日間開催するバザールです。バイヤーも訪れるので、地域のローカル商品がここから百貨店に広がってメジャーになることも。信金はそうしたマッチングにも力を入れていて、損得抜きで橋渡し役を担ってくれている印象です。



イン&アウトバンドも視野に、ともに未来を拓く

河合陽子さん

小此木 地域密着の信金としては「地産地消」が原則と考えていますが、少子高齢化のなかではインバウンド、アウトバウンドに目を向ける必要もあります。たとえば石川県の、のと共栄信用金庫は北海道や東北の信金と連携して、能登空港と地方空港を結ぶチャーター便を飛ばして旅行者を増やし、双方の行き来を活発にする取組みを行っています。地域交流が活性化すれば、商店街同士も切磋琢磨し、よりいいものが生まれるはずですし、地域外にそれを売り込むこともできます。人口減少のなかでビジネスを維持し、発展させるためにはとても重要な視点だと思います。

河合  商店街も信金のもつ全国ネットワークを利用すれば、地域外から人を呼び込むような新しい展開が期待できそうですね。

桑島  そうなれば、海外からの観光客の観光の仕方も変わってくると思うんです。いまは爆買いブームに支えられていますが、このまま続くとは思えない。いま日本を訪れる外国人の約96%は「また日本に来たい」と回答しています。二度、三度と足を運ぶ人は、よりローカルな旅を求めるはずです。たとえば、街の銭湯に入ったり、商店街をぶらぶら歩いてつまみ食いをしたり。世界遺産や有名な観光地だけでなく、ローカルな神社やお寺を巡ってみたり。そこで商店街と信金が手を携え、ハードとソフト両面で街なか観光を快適に楽しんでもらう環境づくりが必要になってくると思います。

河合  2020年東京五輪へ向けて「観光」は大きなテーマとなりますが、「その後」も見据えた長期的な視点は必要不可欠。そのためにも信金と商店街が一緒に地域の未来を考えていくことが大切ということですね。



☆ここに注目☆ 信用金庫での仕事のやりがいを学生に伝える

 教育と研究振興のために外部組織の人材が大学で実施する寄附講座。全国信用金庫協会小此木さん、桑島の両名とも過去に寄附講座での講義を担当している。大手銀行を志望する学生が多いなか、信用金庫の地域貢献への取組みについて語ることは、学生が信金への興味を持つ大きなきっかけにもなっているようだ。

桑島   「これまでに駒沢大学や日本大学の商学部で行われていた寄附講座に、年に1回ずつお招きいただいて、学生たちに話をしています。私は商店街の立場から、信金とどのようにお付き合いさせてもらっているか、普段感じていることを学生さんに話をします。なかには、興味を持ってくれる学生もいて、信金に就職したという実例もあるようです。信金が地域貢献や社会貢献というのを、いかに担っているかというのを分かってもらえると、関心が強くなるようです」

小此木 「学生の数が減っていることもあると思いますが、信用金庫をめざして就職活動をする学生はメガバンクや地方銀行に比べ多くありません。しかし、寄付講座や業界研究セミナーで「地域」をキーワードにした講座を設けると多くの学生が集まってきます。ここでは地域を育てるという仕事の魅力を語って行くわけですが、信金の仕事が地域をサポートしていることを話すと学生の目の色が変わります。こういったことを説明していくのはとても大切だと思います」

学生たちへダイレクトに信金の活動を伝え、地域貢献に向けた意識をしっかり育むということは、地域の持続的な発展に欠かせない取組みだといえるだろう。

 






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