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全国各地の商店街活性化の事例から、「商店街活性化のヒント」になるノウハウをご紹介します! 商店街支援ノウハウ

 

Profile

土屋日出男さん
発寒北商店街振興組合 理事長。組合では、「ハツキタくらしの安心窓口」や「ハツキタ茶屋ぎんなん通り」といった取組みでにぎわいを創出。「40年後に住みやすい街になる」ことをめざし、世代間交流、地域団体間交流、高齢者支援、子育て支援などの活動を行っている

今村まゆみさん
観光まちづくりカウンセラー、キャリアカウンセラー。'88 年(株)リクルートに入社し、'97 年より「じゃらんガイドブック」編集長を務める。'03 年に退職し、現在は「コミュニケーション」や「まちづくり」、「自分らしさ振り返り」をテーマに研修講師や講演を開催

大和(おおわ)和道さん
向島橘銀座商店街協同組合(通称、下町人情キラキラ橘商店街) 事務局長。組合では、氏が青年部長となった'85 年から朝市、七夕まつり、びっくら市、夕市、ワイワイウィークなどさまざまなイベントを企画し、以降30 年以上継続して運営。地域のにぎわい創出に貢献している

桑島俊彦

(株)全国商店街支援センター 代表取締役社長。全国商店街振興組合連合会 理事・最高顧問、東京都商店街振興組合連合会理事長。'81 年、東京都商店街連合会の初代青年部長、'84 年、全国商店街振興組合連合会の初代青年部長となり、その後要職を歴任。活気ある地域づくりに注力


今、全国各地の商店街で取り組んでいる活動が、さまざまな地域を元気にする新しい潮流となっている。

 

商店街に光を当てるリーダーたちが集結
 
 高齢化と後継者不足、大型店進出による客離れ。商店街を取り巻く状況は厳しさを増している。そんな現状を打破すべく、強い意思と行動力をもって改革にあたる牽引者がいる。今回は、それぞれ画期的な試みで商店街を元気にする北海道札幌市の土屋日出男氏(発寒北(はっさむきた)商店街振興組合 理事長)、東京都墨田区の大和和道(おおわかずみち)氏(向島橘銀座商店街協同組合 事務局長)の両リーダーが登場。さらに、全国商店街支援センター(以下、支援センター) 社長の桑島俊彦、ファシリテーターに観光まちづくりカウンセラーの今村まゆみ氏を加え、それぞれの立場や活動を通した商店街の今、そして未来像を語ってもらった。

 


モノを売る商店街から
サービスを売る商店街へ


土屋日出男さん

今村  
土屋さんは北海道、大和さんは東京と、それぞれ事情は異なりますが、おふたりとも商店街のリーダーとして長く活動されています。まずは土屋さんにお伺いしますが、商店街の現状はやはり厳しいものですか?

土屋  そうですね、私どもの発寒北商店街は札幌の郊外にあるのですが、振興組合ができた 年代には107の店舗と3つの市場があり、多くのお客様でにぎわっていました。しかし大型ショッピングモールやスーパー、コンビニの相次ぐ出店によって客離れが加速し、一時は70店舗を切ってしまったんです。

今村  それが最近は、少しずつ活気を取り戻してきているとお聞きしました。どんな取組みをされたのでしょうか?

土屋
  
品揃えや価格、利便性では大型資本の小売店には太刀打ちできません。ですから私たちは、商店街の機能そのものを見直し、モノを売るだけでなく「サ ービスを提供する存在」になろうと。そのために支援センターのサポートを受けて'12年に「ハツキタくらしの安心窓口」を立ち上げました。これは地域社会の困りごとを商店街が窓口になり解決するもので、困ったときに相談してもらい、商店街が適切な事業者を紹介するシステムです。高齢の方は自分の家でも 高い所を掃除できないといった生活面での苦労は多い。以前「テレビがつかない」と、商店街を頼ってくれた方もいました。原因はコンセントが抜けていただけなのですが、高齢の独居世帯などはそうした身近な相談ができる相手もなかなかいません。そこを商店街が担うことで、新たな存在意義をつくっていこうと思ったんです。

今村  商店街が紹介する加盟店も家の修理、設備関連、不動産、財務や相続遺言相談など幅広くて、街の台所から、まさに地域 生活を担う立場に変化したわけですね。ちなみに、窓口を開設したことで商店街の売上アップにはつながりましたか?

土屋  はい、おかげさまで、スタートした'12年は149万円、'14年は3年目で1600万円の売上がありました。参画店舗は20店ほどです。

桑島  20店舗で1600万円の売上っていうのは凄いですね。

土屋  やはりそれだけニーズがあったんですね。でも、参画業者さんに言わせればそれは「商店街の信用があってこそ」と。商店街が窓口になっているから、地域の方々も安心して相談してくれるし、頼ってくれるんだとおっしゃってくださったのは嬉しかったですね。

今村  確かに「廃品回収承ります」なんてチラシがポスティングされたりしますが、見ず知らずの業者にはなかなか頼みにくいですよね。その点、商店街が窓口なら安心感があります。

 
今村まゆみさん



商店街機能の見直しが
新しい力を呼び込む


今村  モノからサービスへ。商店街の役割を見つめ直したことで、何か別の効果はありましたか? たとえば、サービスの担い手となる新しい人が商店街に入ってきたとか。

土屋  まさにその通りです。今でも閉店していくお店はありますが、代わりに新しいお店が入ってくるようになりました。サービスの事業者は20代から40代の若い方々が中心で、商店街全体の新陳代謝が進んでいます。

今村  高齢化、後継者不足も解消されつつあるわけですね。

土屋  はい、昨年は長く空き店舗だった物件にパン屋、花屋、たこ焼き屋など、サービス事業者以外のお店も入ってきました。これまで商店街がいくら空き店舗対策をやっても全く埋まらなかったのに、不思議ですよね。やはり商店街が元気だと、向こうから入りたいと来てくれるようになるんですよ。今はそうした若い仲間を増やしながら、次世代の地域社会の担い手を育てていこうとしているところです。

 

地域密着型の商店街として地元目線のイベントを企画

今村  次に、大和さんが事務局長をされている向島橘銀座商店街協同組合、通称「下町人情キラキラ橘商店街」についてお伺いします。やはり、大型店の進出による影響はありますか?

大和  確かに影響はあります。でも、それも各個店の頑張り次第です。たとえば商店街は日曜や年末年始に休む店が多く、年間だと平均90日休んでいると言われています。これではスーパーには勝てません。そこで、私たちはやる気のある若い店主を中心に、日曜営業や1231日まで売るイベントを開催しています。また、夕方に店舗の軒先で蕎麦店がてんぷらを、寿司店が酒盗(塩辛)を売るといった試みも行っています。もともと私たちの商店街は近隣型、地域密着型の商店街として地元のお客様を大切に今までやってきました。大事なのは地域の皆さんに「いつ来ても買物ができる安心感」を持ってもらうことです。そのコンセプトはこれからもぶれずにやっていきたいですね。

今村  地域の方々の目線に合わせたイベントも、かなりの数を開催されていますよね。これはいつ頃スタートしたのですか?

大和  私は今62歳なのですが、28歳のときに青年部長になり、始めたイベントがほとんどです。

今村  凄い! 28歳にして商店街を引っ張るリーダーの役を担われたのですか。

大和  いやリーダーっていうほどのものじゃないですよ(笑)。当時は商店街に若い連中が多くいて、何か新しいことを始めようという気概に満ちていました。一人ひとりがリーダーで、商店街を、地域を盛り上げようと自主的に行動していたと思います。

今村  なるほど。そこでまず始められたのが30年以上続く人気イベントの朝市ですね。

大和  おかげさまで今も月1回、3千人くらいのお客様に足を運んで頂いています。30年やっていると常連客も高齢になっていくので、今はシニアの皆さんに合わせて早朝6時から開催するようになりました。せいろの赤飯や限定のスープなど特別な惣菜も出て、行列もできます。商店街の惣菜を食べ歩く「つまみぐいウォーク」や年に一度の夜市など、年間30以上のイベントがありますね。8割が食に関する店舗なので、食のイベントを充実させて地元に楽しみをつくりたいと思っています。

今村  ちなみに、こうしたイベントの運営費用はどこから出ているんですか?

大和  基本的には各店舗から集める参加料でまかなっています。自分たちの商店街を盛り上げて人を呼び込むことで売上につながるわけですから、それは販売促進費として各店が負担するべきだと思っています。やはり自分たちでお金を出して運営すると、やる気や責任感も違ってきますからね。

 


商店街イベントは
平時の防災訓練


大和和道さん

大和  こうしたイベントって、じつは「地域防災」という観点からも有意義なんですよ。これは桑島さんの受け売りですが、災害時というのは、いかに地域の「共助の力」が働くかが重要。普段から地域の住民同士が顔を合わせてコミュニケーションをとり、お互いの状況を把握しておけば犠牲者をうんと減らせるはずなんです。そういう意味では、地域の人々をつなげるイベントは平時における防災訓練といえるのではないでしょうか。

桑島  まさにその通りですね。阪神大震災の時も自助で助かった方が7割といわれています。そこに共助の力が3割加われば、犠牲者をゼロにすることができるわけですから。普段からイベントで密に交流することで、向こう三軒両隣じゃないですけど、地域全体としての防災意識が高まってくる。先ほどの土屋さんのお話にも通じますが、やはり商店街というのはモノを売るだけでなく、地域社会に貢献する存在でなくてはならない。

今村  地域活性と防災。まさに一粒で二度おいしい、素晴らしい取組みですね。ただ、個店がお金を自己負担するとなると、渋る人も出てくると思います。反対する人はいないのですか?

大和  もちろん反対派もいますよ。どうしても全体の3割くらいは乗り気じゃない。だからその人たちには、協力はしなくていいから邪魔しないでくれと言っています。言葉は悪いですが、ときにはそういった割り切りも必要になります。

今村  辛辣ですね(笑)。

 


懸案は若手の育成
求む次世代のリーダー

桑島  でも、大和さんはそうおっしゃっているけどね、実際には義理と人情を大事にしていて、各所にしっかり筋を通しているからこそ強くものが言えるんですよ。それってリーダーにとってはすごく大事な資質。土屋さんもそうですが、活気ある組織には人心掌握とマネージメント力に優れたリーダーが必要不可欠なんです。

今村  桑島さんも、28歳で東京都世田谷区の千歳烏山の商店街組合の青年部長を務められていますよね。土屋さんも大和さんも20代から商店街の牽引役として先頭に立ってこられた。そんな皆さんから見て、今の若い方はいかがですか?

桑島  昔は自らリーダーになろうって人がたくさんいたんですけど、今は時代背景もあって、みんな消極的ですね。自分や家族の生活が最優先の個人主義になってしまっています。今日同席している土屋さんや大和さんのように、他人のために身を粉にしようという意識は、残念ながら薄いように感じます。

今村  土屋さん、大和さんもしきりに頷かれていますね(笑)。

桑島  黙っていてもリーダーは生まれない。だから、つくっていかないといけないんです。そのために、支援センターでは「商人塾」という人づくりのための研修を全国で開催しています。これを受けると消極的な人でも人前で自分の意見をしっかり語れるようになります。

今村  なぜそんなふうに変われるんでしょうか。

桑島  座学で専門家の話を聞く以外に、受講者には自分なりの意見発表の場も設けています。最終的には一人ひとりにまちづくりのプランもプレゼンしてもらうのですが、こうした経験を通じて自信がつきます。

土屋  私どもの商店街の若手も札幌で開催された商人塾に参加しましたが、やはり劇的に変わりますね。商店街の仕事に対する誇り、地域社会へ貢献しようという自覚も出てくるのか、いろいろと工夫をして地域を盛り上げようとしてくれます。

大和  違う都市の人とつながれることも「商人塾」のメリットです。リーダーをめざす人同士の意見交換は刺激的ですし、交流によって地域社会の担い手としての意識もより高まります。

今村  視野が広がりますね。

桑島  これからの商店街は、より公共的な立場で組織商業者にはできないことを担っていく必要があります。そのための人材育成は急務です。しかし、そのためには、若い人に「商店街で働きたい」と思ってもらえるような、元気で魅力ある環境を全国各地のリーダーがつくっていかなければならない。もちろん自助努力も大事ですが、我々のような支援センターのサポートも上手に活用して頂きたいと思います。


桑島俊彦


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