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全国各地の商店街活性化の事例から、「商店街活性化のヒント」になるノウハウをご紹介します! 商店街支援ノウハウ

特別対談コミュニティの、そして観光の新たな担い手となる商店街
「住んでよし、訪れてよし」のシンボルとして、地域住民と来街者が一体となって“交流”を深められる、商店街の新たな可能性が見えてきた。まちなか観光と商店街振興に向け、「商店街にとっての観光の意義」「地域の資源掘り起こしと活用」「観光立国に向けて商店街が果たす役割」「観光を活かした商店街活性化のための方策」などについて、絶好のビジネスチャンスとなる2020年東京オリンピック・パラリンピックも見据え、商店街と観光のエキスパートが語り合う。


観光地域づくりプラットフォーム推進機構会長 立教大学観光学部 兼任講師 清水 愼一 Shinichi Shimizu
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(株)全国商店街支援センター 代表取締役社長  桑島 俊彦 Toshihiko Kuwajima


Profile
清水 愼一 Shinichi Shimizu
1948年長野県生まれ。JR東日本取締役、(株)ジェイティービー常務取締役、立教大学観光学部特任教授などを歴任。観光地域づくりプラットフォーム推進機構会長、立教大学観光学部兼任講師。

桑島 俊彦 Toshihiko Kuwajima
1941年東京都生まれ。全国商店街振興組合連合会理事・最高顧問、東京都商店街振興組合連合会理事長、世田谷区商店街振興組合連合会理事長、烏山駅前通り商店街振興組合理事長などの要職を兼務。(株)全国商店街支援センター代表取締役社長。

街歩きのシンボルは商店街 ありのままの暮らし見せる

 

桑島 株式会社全国商店街支援センターでは、「地域コミュニティの担い手」である商店街を元気にする方策の一つとして、“まちなか観光”をこれから積極的に取り上げていきたいのです。 

清水 私はもともとJR東日本やJTBの役員を務め、その後、立教大学の観光学部で教鞭をとってきました。ずっと地域づくり、とりわけ観光を活かした地域づくりに携わって、あちこちのお手伝いをしています。観光客の動向は2000年以降ガラリと変わりました。バブル期の非日常的な観光、温泉や豪華な食事あるいはテーマパークとかいったものが影を潜めてきました。今、“街歩き”という言葉に象徴されるように、普段自分たちが住んでいる街とは違う街を歩きながら、その雰囲気や歴史、文化に育まれた暮らしを楽しむようになってきたんですね。非日常から異日常とでも言いましょうか。すごく変わってきました。
それで街を歩きながらそこでの暮らしを味わうお客様はどこに行くのだろうと調べてみたところ、圧倒的に地域の商店街なのです。街歩きのシンボルは商店街であるということですね。商店街を楽しむ“まちなか観光”が、もしかすると観光の主流になってくるのかなという思いを強く抱いています。
コミュニティの中心としての商店街があってこそ観光が成り立つんだなと感じています。結局、人が安心して暮らせる、安心して暮らすためにはある程度顔が見える、あるいは緩やかなつながりがある。まさにそういったものを商店街は担い、それを観光に来た人たちも感じとって楽しむんですね。コミュニティの拠点である商店街を強めること、そこに手段としての観光があると思います。 

桑島 金沢の近江町市場なんかは観光客がバスに乗って大勢来るんですね。同時にここは昔から金沢市民の台所として地元のお客様も大切にしている。京都の錦市場もそうです。コミュニティを形成するのが先で、結果観光につながるということでしょうね。
東京には商店街が2700弱あるんです。そこで年間2000のイベントをやっているんですよ。祭りですから、いろいろな人が集まってくる、それによって文化の創造・伝承、にぎわい創出などが行われている。さらに、これは平時における防災訓練なんです。いざとなった時の備えと地域住民との人間関係の構築を忘れてはいけないと思います。 

清水 平時における防災訓練ですか。まさにコミュニティの担い手としての商店街の公共的な役割を象徴的に表している言葉です。観光サイドから見ると観光客のためのイベントについての議論をしがちなのですが、観光客は観光のためのイベントを好むわけじゃなくて、普段の暮らしを味わいたいのです。ですから街の人たちが、普段の暮らしの中で、さまざまなイベントも実施する。そういうところに実は観光客は加わりたいという動きになってきているんです。 

桑島 観光だとかイベントだとか、そういうことに対して何か事があると自粛するムードが日本にはありますね。東日本大震災の後、浅草の三社祭をはじめ、ありとあらゆるイベントが全部自粛となりました。しかし、私ども世田谷区の用賀商店街振興組合では反対を押し切って桜まつりを実行して、義援金を集めたんです。2日くらいで500万円集まった。そのお金と水を2トントラック2台にいっぱい積んで友好都市の陸前高田まで運んだんですね。自粛してじっとしているのとどちらが良いんでしょう。観光でもそうですね。 

清水 結局、観光とかイベントとかは単なる享楽だと思われているからではないでしょうか。確かに1980年前後、温泉に行ってどんちゃん騒ぎして旅の恥はかき捨てというのがありました。もともと観光という言葉は「国の光を観る」、地域からですと「国の光を観せる」ということなのです。光というのは暮らしぶりです。ありのままの自分の街の暮らしぶりをお見せする。それでお客様は他人の暮らしぶりを見て、そうかこういう暮らしぶりがあるのかと参考にするというのが観光の語源です。そういった意味でも大震災の後、あのような時こそ率先して皆で観光に行くことも地域の復興につながると思います。

美しい街並みは住民の誇り 「寅さん、お帰りなさい」



桑島
 海外からのお客様も増えている昨今ですが、コミュニティを担う商店街で大切な事は安全、安心ですね。それにはインフラの整備も必要です。今、それが全国的に広がっているのです。防犯カメラは犯罪の抑止になるし、LED化が進んでいますから夜中でも明るくて犯罪が起きにくい、そういう点で日本の商店街は非常に安全なんですね。それと景観です。2020年東京オリンピック・パラリンピックまでに電柱の地下埋設を積極的に進めることになっています。しかし日本の街並みのファサードは、あまりにも美しさが足らない、色も自由でしょ。
2020年にはインバウンド2000万人を目指すとなっています。海外からのお客様がローカルの地域商店街にも来て、歩きながら景観を楽しんだり店をのぞいたり銭湯に入ったり、素敵な光景ですよ。日本に来れば買い物だけで秋葉原だとか新宿、渋谷、銀座の大型店に行くのではなくて、ローカルな商店街にも皆さんに足を運んでもらいたい。それには整備しなければならないことがたくさんありますけど、そうなってほしいなと思っています。 

清水
 「住んでよし、訪れてよし」が今の観光のキャッチフレーズです。地域が元気だからこそお客様が集まるんです。街を元気にすることは住民の誇りを醸成していくこととセットであると思います。そして住民の誇りの一つは美しい街並みです。そういった街並みをどのようにつくり上げていくのかは課題ですね。美しい街並みのポイントというのは、ファサードや無電柱化、デザインの統一、地元の文化を大事にする、まさにそういうことだと思うんですね。残念ながらその部分が今まで十分に理解されていなかったのですが、去る6月17日に観光立国戦略会議があって無電柱化を徹底的に進めるということが決まりました。
以前、柴又帝釈天の商店街の方に「私どもは皆で自主規制しています。大きなビルも建てずにできるだけ古い街並みを大事にして。なぜかというと山田洋二監督が寅さんは死んだんじゃないんだよ、寅さんがフラッと柴又に帰ってきたときに赤い建物があったり、変なビルがあったら『あれ“とらや”はどこだ』と迷っちゃうので今のままの街並みを出来るだけきれいに残してくれという話があって、それで自主規制しているんです」と言う話を聞いた時、私は非常に感動しました。 

地域のちょっとした課題を観光客の力で解決

桑島 その柴又帝釈天の寅さんの像やウルトラマン、サザエさんの像などを商店街が建てると固定資産税の対象になるんです。確かに観光の目玉にはなっているかもしれないけど、それで利益を得るわけじゃない。ああいう像を置くことで皆が楽しんでにぎわいを創出する、結果的に文化的な面などからの税収が入ればいいわけですから、像そのものに税金をかけるということもいかがなものかと思います。 

清水 どうしても日本の場合、縦割りが強いですからね。確かに税務の人から見るとあれは固定資産税の対象だというのが原理原則かもしれないけれども街を元気にするという大きな目標からすると疑問です。そういう事例が結構ありましてね。街なかの路上でコーヒーが飲めるオープンカフェなどは外国では当たり前ですけれど、日本の場合は道路管理者が路上でビジネスをするのはダメだと言ってなかなかうまくいかなかったんです。ようやく今度規制緩和しようということになりました。ああいったものも、そもそも街全体の活性化、街を元気にすることによって皆が楽しくなるんだという根本を忘れがちになるんですね。
 
桑島 イルミネーションは冬の風物詩になってきているし、観光にも役に立ちますよね。昔は白熱球だから長くやると木が傷むんだけれど、今はLEDだから木は傷まない。ところが相変わらず月に1回、役所や警察に足を運ばねばならない。3か月なら3回です。縦割り。観光を振興するには我々の方から提案してボトムアップでいままでのスキームを変えてもらう努力をしなければけないと思いますね。 
 
清水 今、インバウンドで外国のお客様が非常に多いですが、彼らははっきりとモノを言います。例えば電柱の話もそうです。富士見坂で富士山が見えるのに「なんでここに電柱があるんだ、邪魔じゃないか」と外国のお客様は言います。そこに住んでる人は言ってもしょうがないとあきらめている。外国や他所からきたお客様たちははっきりと物事を言うので、逆に言うと地域のちょっとした悩みであきらめていたことを観光客の力で解決していくことができると思うんですよ。

外国人が満足する商店街のおもてなし


桑島 世田谷の下北沢がミシュラン発行の、日本を紹介する旅行ガイドで一つ星をもらいました。下北沢は今かき氷が非常に話題になっているんです。それで外国のお客様向けに“かき氷マップ”を作ろうということになり、彼らが欲しい情報を調査したんです。公衆トイレ、クレジットカード対応のATM、Wi-Fi、それと飲食しながら入店しないなどのお店に入る時の注意事項、そういう情報を必要としていることが分かって、それらを記載した“かき氷マップ”が支援センターも応援して出来上がりました。
 
 清水 外国のお客様から見ると氷のああいう食べ方はびっくりするらしいですね。彼らは観光施設を見に来るのではなくて、日本人の暮らしを見てみたいんです。京都、奈良もいいけれど、やっぱり日本人の普段の暮らしが見てみたいという気持ちが非常に強いんですね。そういう意味でかき氷を食べていることも日本独特なので非常に感動するんです。私たちが何気なく思っていたことに感動してくれる。そうか、これは私たち日本の文化として自慢の種なんだなというところが見えてきます。 
 
桑島 今、外国のお客様に雑貨が人気みたいですね。 
 
清水 100円ショップの雑貨なんかも人気ですよ。彼らが喜ぶものは歴史とか歴史的建物とかそういうことを思いがちですけど、実は身近にあるんです。とくに商店街にはそれがたくさんあると思います。 

桑島 観光にとって今、追い風ですよね。政府も観光立国を謳っているし、外国からのお客様も年間1000万人を超えてきて成果も上がっている。日本に来る観光客は90%以上の人が良い国に来たと感じ、帰る時にまた来ようと思う人も95~96%くらいあるようですね。日本に非常に良い印象を持って帰っていく。 
 
清水 外国のお客様が一様に言うのは京都、奈良、富士山も良かったけれど商店街が良かった。治安がとても良くて、心からおもてなしをしてくれるからだという感想が非常に多いです。今、外交的には冷えている中国や韓国の人も日本を好きになって帰るんですよ。インバウンドというのは経済的な側面だけが話題になりがちですが、実は日本の持っている良さを彼らは自国に帰って伝えてくれます。日本のイメージを非常に良くしてくれるのです。
世田谷の区長さんが、うちは観光施設は無いけれど、そのかわり商店街があると言っておられるのはすごく理解できますね。外国からも商店街にやって来るのですから。

商店街は地域資源の宝庫 店主が一番の宝


桑島
 商店街には結構資源が眠っているんです。だからそれを発掘するなり、文化として創ればいいんですよ。例えば下北沢の天狗まつりは商店街の人が創ったんです。今や欠かせない風物詩で、観光名物になっています。何十年もたてば伝統文化ですよ。そういうものも知恵で出せばいいんです。
 
清水 先ほどの金沢の近江町の商店街も地域の人たちにもっと楽しんでもらうために、金沢らしい宝物をたくさん集めて“街なか美術館”など、いろいろやっているんです。私はそういった意味で商店街というのは地域の拠点であると同時に資源の宝庫だなと思います。  
特にお店のご主人が一番の宝だと思っているんです。ですから地域の資産をいろいろ掘り起こすのは良いことだと思います。熊本の商店街では、からしレンコン屋の社長さんが自ら街先案内人と称して、その作り方をお客さんに教えたりしているんですよ。 

桑島 それこそ「まちゼミ」(注)だ。
 
清水 「まちゼミ」なんですよ。かなり具体的にやっているんですね。商店街はこれからいろいろな展開が可能だと感じています。掘り起こしや、そこにちょっと知恵を入れて新しい活動をしてみる。そういった意味で「まちゼミ」は極めて有効だと思います。
 
(注)専門性を活かした個店がプロならではの知識・情報を無料でお客様に伝えることで地域のお店とお客様とのつながりを深める取組み。全国的に約150の商店街で実施している。 

加入促進で観光振興街も個店も潤う

桑島 もう一つ、商店街を強くするには、商店街で商売をする人は商店会に加入していただきたい。商店街がイベント、にぎわい創出事業をやる時はチェーン店や大型店は企業市民として参画し応分の負担をして協力するという意識を持っていただかないと。 
 
清水 そうだと思います。その街のにぎわいがあるからこそ個店が潤っている部分があるんですから、そこにただ乗りしてはいけない。
 
桑島 それなんですよ。祭りをやるとお客さんは喜んでくれるんです。私たちはお金を出す、人も出す、店には人がいなくなるわけです。協力しないお店は前の道路に品物を出して集客するんです。それはどうかと思います。企業も市民なのですから、当然それなりに応分の負担をして協力しないといけませんね、そうじゃないと観光にも影響する。 

清水 仙台の七夕なんかもですね、協力しない店の前は七夕飾りがポコッと空いてしまうんです。こういうことは結果的に地域全体の価値を下げています。自分たちに影響してくるのに気がつかないんですね。 

商店街を知り 観光を知る人材を育成  



桑島
 支援センターが観光に対する指導に取り組もうと考えた時、どういう方にお願いすればいいんでしょうか。 

清水 商店街振興と観光振興をつなげられる方が必要です。実は浅草の観光協会の地図に商店街が載っていないんです。商店街が観光の資源でポイントなのに。合羽橋なんて外国人にすごい人気ですよ。両方見ることができる人をつくっていかないといけませんよね。まだまだ数は少ないのが実情です。
私は商店街と観光をつなげる一つのモデルは世田谷まちなか観光協議会だと思っています。縦割りを超えて皆さん集まっておられる。大学もメディアも鉄道会社も参加して枠を超えて議論してますよね。
 
桑島 観光協議会はコストもかからないんですよ。小さく生んで大きく育てようと思ったのでハードは後回しにし、ソフトでいこうということで協議会を作ってやってるんです。 

清水 大賛成ですね。いろいろな取組みを大学生と商店街など様々な人たちが一緒にやっているでしょ。世田谷線つまみぐいウォーキングのような取組みだとか。ああいう活動が広がるのが一番大事ですよ。 
 
桑島 世田谷線はローカル電車です。三軒茶屋から下高井戸まで走っている昔でいうちんちん電車。そこでつまみぐいウォーキングをやったら当日雨でしてね。ところがインターネットで2000人の制限で予約をとっておいたら、土砂降りの中、その2000人が来たんですよ。ほとんど来ないんじゃないかと思っていたんですけど。仕掛けの仕方で違うんですね。 

清水 あれで世田谷線は乗るだけじゃなくて楽しめるってことになりましたよね。ああいう取組みの中で商店街も観光も分かる人材が育っていくと思いますね。
私も今日あらためて商店街の価値や位置づけをいろいろな意味で理解しました。是非、街歩きを求めてお客様がたくさん来るような商店街が日本中に増えていってほしいですね。
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