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全国各地の商店街活性化の事例から、「商店街活性化のヒント」になるノウハウをご紹介します! 商店街支援ノウハウ

~子育て支援NPO法人に聞く~
テーマ:「子育て支援NPO法人」×商店街の連携を探る

子育て支援NPO法人との連携から広がる商店街の未来各種連携

商店街には、親子に気軽に声をかけ、見守ってくれる環境がある

——今日お集まりいただいた皆様は、ほぼ10年に渡り商店街で子育て支援施設を運営されていらっしゃいます。まずは商店街に施設を開設するに至った経緯をお聞かせください。

2012年10月に郭町商店街で行なわれたハロウィーン仮装イベントの様子【NPO法人くすくす】

丸山: 2003年に、名古屋市北区にある柳原通商店街で1~3歳までの子どもを持つ方を対象にした子育て広場「遊モア」を開設しました。私自身、転勤族だったので、ふたりの子どもを育てるのに大変な思いをしました。その経験をもとに、「悩んでいるのはあなただけじゃないのよ」と発信すると同時に、そうしたママさんたちの情報交換の場になればと施設を立ち上げました。商店街に施設を置くことにした背景としては、子育てをしているママさんたちが孤独感にさいなまれているケースが多いというのを踏まえ、働く人がいて、生活する人がいて、親子を受け入れ、気軽に声をかけてくれるような環境が商店街にはあるからです。名古屋市の助成金と利用料と寄付金で運営しています。

中橋: もともと子育てに関する情報誌を発行していたのですが、一方的な発信ではなく、子育てする人たちと実際に情報交換ができるリアルな場が必要だと切実に思うようになり、子育て広場の開設に至りました。施設を利用していただくには、わかりやすい立地でアクセスもいい商店街が一番だということで、2003年に坂出(さかいで)市の坂出元町名店街で事業をスタートしました。翌年、市の委託事業となり、その後、隣接する高松市からの利用者も多かったことから、高松市の丸亀町商店街にも広場を開設しました。

ぶらくり丁商店街にある子育て支援施設「キッズステーション」【NPO法人子どもNPO和歌山県センター】

久保田: 山口市の西門前商店街で子育て広場「ほっとさろん西門前てとてと」を運営しています。市の委託事業であり、商店街の中に施設を設けたのも市の計画でした。当初は、私自身は一育児サークルのメンバーであり、経験もなかったので、中間支援のNPO団体が委託を受けていました。その後、3年経験を積み、新たにNPO法人を立ち上げ、現在は、直接市から委託を受けています。

岡本: 私どもの子育て広場「キッズステーション」は和歌山県民ならほぼ誰でも知っている和歌山市ぶらくり丁商店街にあります。せっかく施設を作るならアピール力のある場所でやりたいという思いがありましたし、和歌山県とは、開設に向けて最初から連携がありました。

地道な努力で地域や商店街に存在を認められるように

——商店街にとって馴染みのない子育て支援施設を定着させるまではいろいろな悩みがあったと思われますが、どのように乗り越えてきましたか?

2012年12月に柳原通商店街で行なわれた「餅つき&落書きアート大会」の様子【NPO法人子育て支援のNPOまめっこ】

丸山: 当初は、商店街の人たちも「子育て広場って何?」という反応で、「一日遊んでいればいいなんて、優雅でいいね」「商売としてやっていけるの?」などと揶揄されたこともありました。実際、商店街のおばあちゃん世代からすれば、お金を払って子育てを支援してもらうなんて考えられないという感覚が根強かったのでしょう。しかし、この10年で、施設を利用するママさんたちが商店街も利用するということがわかってきたものですから、商店街の方たちも施設の存在意義を認めてくださるようになってきました。

安田: 施設について知っていただくために、特別なことをしたわけではありません。商店街の人たちと会話をする、いわゆるご近所づきあいの中で、子育てをするママさんたちをサポートする施設なのだというのを浸透させていきました。今では、子育ての悩みを聞いた商店街の人たちが、「あそこで相談してみたら?」と紹介してくださったり、商店街の若女将が忙しいときに、おばあちゃんが孫を連れてきて一緒に利用されるというケースも多くなりました。

広場利用のきっかけ作りとして、スタッフによる絵本の読み聞かせや芋ほり体験を行う「ドキドキお楽しみデイ~お芋ほり~」などを実施【NPO法人あっと】

久保田: 苦労したのは、私たちは商店街のことを何も知らなかったものですから、なかなか理解し合えなかったことですね。商店街の組合の方には、夜の会合への出席や、イベントへの協賛金や協力を求められたりしました。随分悩みましたが、ビジネスライクなやり方は好まれないようで、顔馴染みのおじさん、おばさんに話すように会話を交わしていくうちに次第にギクシャクした関係は解消されていきました。出資できなくてもイベントなどに場所を提供したり、広報活動などで協力することで折り合いをつけられるようになりました。

施設利用をきっかけに、ママさんたちが商店街の魅力を発見

——商店街に子育て施設があることで、お互いにもたらされる波及効果はどのようなものがあると思われますか?

安田: 利用者は一日20組ぐらいです。ママさんたちが食事やおやつを近くのお店で買ったり、ちょっと薬屋さんへとか、夕飯の買い物をという感じで商店街を利用しています。また、商店街との交流イベントとして、ハロウィーン行事を毎年開催しています。子どもたちが仮装して商店街をパレードし、毎年40組を超える親子が参加する名物イベントになっています。

丸山: 私どもの施設でも、食事はママさんたちが商店街のお店で購入していて、なかには、施設が休みの日はお客さんが減るというお店もあり、施設の休館日には、営業しないお店も出てきています。一方、ママさんたちからの商店街のマップが欲しいという声に応えて、NPO法人でマップもつくりました。私たちがママさんのニーズを聞き、それを商店街に橋渡しするという役割を担うという側面もあると思います。

2013年1月に坂出元町名店街とコラボして行なわれたもちつきイベントの様子【NPO法人わははネット】

安田: いまどきの若いママさんたちの中には、商店街での買い物に戸惑いを感じる方が多く、「お肉屋さんではブロックで買わなくてもグラム単位で買えるわよ」「魚も頼めば切り身にしてくれるわよ」とアドバイスすることもあります。話を聞いて、「それじゃ行ってみようかしら」という感じになって、だんだん商店街での買い物の楽しさがわかってくるようです。大人だけでなく子どもにも商店街の魅力を伝える試みもあります。ハロウィーンイベントでは、子どもたちがお菓子をもらうためにお店の中まで入り、その店はどんな店でどんな商品を扱っているのかを知ります。さらにお店の人たちといろいろ会話をすることになり、それぞれの個店の魅力を発見するきっかけにもなるのです。

中橋: 施設を利用するママさんにアンケートをとったところ、今まで商店街を利用したことのない人が9割でしたが、今では施設をきっかけに、商店街を利用するようになり、「スーパーよりむしろ安い」「調理方法や食べ方までアドバイスしてくれる」「会話ができて楽しい」といった感想を聞きます。一度、商店街のよさを知ると、商店街での買い物が習慣になってくるようです。

——商店街への要望や期待はありますか?

中橋: ようやく施設の存在意義を理解していただけるようになったので、これからは、私たちが商店街に貢献すると同時に、商店街の側でも私たちのようなNPOを育てていただけるような関係性を一緒に構築していきたいですね。イベントの場所提供や、広報活動の協力は多いのですが、それらはほとんどボランティアです。例えば、商店街のチラシやホームページをつくるなど、私たちが仕事としてそれを受注できる、いわゆるビジネスとして利益を生めるような関係性をつくれればいいですね。また坂出の商店街は後継者がいない店が多いので、ママさんと商店街の間に育ってきた絆をもっと進化させ、将来的には「後継者がいないから、あなたに店を貸すわ」と言ってくれるような新しい後継者育成のカタチができないかと考えています。

岡本: 「空き店舗を若い世代に」といっても、若い人にとって商店街は高嶺の花でなかなか手が届きません。ぜひ家賃を抑えていただき、施設を利用するママさんたちのアイデアを生かしてチャレンジショップなどが実現できる「やりたいことが叶えられる商店街」になって欲しいです。それでこそ、商店街の未来が開けるというものではないでしょうか。

安田: 施設を利用するママさんたちと、商店街とのつながりができてきて、直接、「こんな商品やサービスがあったらいい」ということを商店主に提案できるようになってきています。魅力的な商店街とは、「行きたくなるような店があること」、そして「欲しいと思う商品があること」が重要なのではないでしょうか。ママさんたちの声にぜひ耳を傾けていただきたいです。大いに商店街の魅力づくりに役立つはずです。

商店街は教育の場。子育て支援施設こそ、商店街と連携すべき

中橋: 商店街に来れば、否応なく会話することになり、お店の人はもちろん、買い物に来ているおばちゃんたちが、「今日は何が安い」とか、「これはどう調理したらいい」とか、「子育てはどうしたらいい、こうしたらいい」ということまで、あれこれ声をかけてくれるわけです。ママさんたちにとっては、自分たちを見守ってくれている安心感がありますし、そうした中で、親が親として育っていくさまを私たちはたくさん見てきました。そうした関係性ができると、継続的に商店街で買い物をしたり、商店街のイベントの時は必ず参加するというように親子ともども商店街に対して愛着を持つようになります。

坂本: そもそも商店街は教育の場として、重要な役割を担っていると思います。私は埼玉県新座市で子育て広場を運営していますが、商店街ではありませんので、ほかのメンバーがうらやましい限りです。私自身も商店街で育ち、親が店で忙しい時には、商店街内の食堂に食べに行くことがよくありました。そうすると、食堂のおばちゃんが「出されたものはちゃんと食べなさいよ」と言って、よその家の子でもしつけてくれるんです。つまり、商店街では、いろんな局面でどこの子か関係なく、他人が教育してくれるのです。子どもだけではありません。親も教育されて、親として育っていくようなことが、自然に行われています。そういった局面から考えても、商店街と子育て支援施設はいまこそ連携を目指すべき、そう強く思います。

子育てならではの悩みを共有できる場が求められている。写真は新座市栄保育園地域子育て支援センター「るーえん」【NPO法人新座子育てネットワーク】

子育て支援NPO法人の皆さん(写真左から)

  • NPO法人あっと代表理事
    久保田美代さん(山口県山口市西門前商店街)
  • NPO法人わははネット理事長
    中橋恵美子さん(香川県高松市丸亀町商店街・坂出市坂出元町名店街)
  • NPO法人子どもNPO和歌山県センター理事長
    岡本瑞子さん(和歌山県和歌山市ぶらくり丁商店街)
  • NPO法人くすくす理事長
    安田典子さん(岐阜県大垣市郭町商店街)
  • NPO法人子育て支援のNPOまめっこ理事長
    丸山政子さん(愛知県名古屋市柳原通商店街)
  • NPO法人新座子育てネットワーク代表
    坂本純子さん(埼玉県新座市)
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