facebook page

全国各地の商店街活性化の事例から、「商店街活性化のヒント」になるノウハウをご紹介します! 商店街支援ノウハウ

これからの商店街には地域の「お困りごと」に耳を傾け、解決する力が求められているコミュニティ

インタビュー:石原武政氏(流通科学大学商学部特別教授)

人と人とのふれあいが希薄になった現代、地域社会に密着したコミュニティの担い手としての商店街の機能が見直されていますが、抱えている問題は地域によって異なるだけに、商店街が果たす役割もさまざまです。
そこで今回、石原武政氏(流通科学大学特別教授)にこれからの商店街に求められるコミュニティ機能とは何か、そのために商店街はどう取り組むべきかを解説していただきました。さらに「食」×コミュニティ、「集いの場」×コミュニティ、「若者世代」×コミュニティという3つの切り口で、今、地域に頼られ、好かれる商店街としてコミュニティ機能の向上に取り組む事例を紹介します。

なぜ、今コミュニティなのか?

商店街活性化とよく関連付けて語られる「コミュニティ機能」というキーワード。その背景には、人間関係が希薄になっている現代社会があります。昔ながらの人と人とのつながりがなくなったことで、地域で起こるさまざまな問題を地域で解決できなくなっている。そこで見直され始めたのが商店街のコミュニティ機能です。つまり、地域の問題解決のために、商店街ができることがあるのではないか、と期待されているのです。

例えば、阪神大震災の時、「あそこのおばあちゃんはどこどこの部屋にいるはず」というご近所さんの証言で助かった人がずいぶんいました。非常時には、そうした昔ながらの地域のつながりが大いに役立つのです。ところが、こうした昔からのつながりは、プライバシーなどおかまいなし。どこの誰が病気しているだとか、どこの息子がどこの学校に行ったなんてことも全部筒抜け(笑)。そうしたベタッとしたつながりが消費者の方も商店主の方もうっとうしいと思い始め、何も話さず買い物を済ませられるスーパーに足が向くようになる。

そんな流れが出てくると、商店主の方も消費者に気を遣って余計な話はしない方がいいのだろうと、お互いどんどん距離を置くようになり、商店街もばらばらになっていった。そうやって20年、30年が過ぎた今、地域では、例えば、万引きの問題ひとつとっても解決できなくなってしまっている。対策となるとすぐさま、「防犯カメラをつけましょう」「警察に相談しましょう」となる。そうなる前に地域でできることはないか、商店街にできることがないか、それが「コミュニティ機能」ということなのです。

地域に頼られる商店街になるために

そもそも商店街の役割とは何か。消費者にとっては、まずは買い物できる場所ということになる。そこで生じるのが、「よりよいものをより安く」という価格競争です。これはひとつの競争の方向性ではありますが、どうしたって、大手には勝てないわけです。

そこで、買い物以外の役割が果たせないものか、という視点で考えることが必要になります。ここで注目したいのが「コミュニティ機能」です。言葉だけ聞くと、なにやら仰々しいことに捉えられるかもしれませんが、地域のニーズに耳を傾け、商店街ができることはないか、手伝えることはないかを模索し行動に移すことで、地域に頼りにされ好かれる商店街になり得るのです。

地域の「お困りごと」の解決の仕方には、それぞれの商店街でいろいろな着眼点があるはずです。

例えば、全国で空き店舗が大きな問題になっていますが、そこに地域住民が気兼ねなく集まり、語らうことのできるスペースができたらどうでしょう。また飲食店が出店すれば、買い物はスーパーでという若者が商店街を知り、利用するきっかけにもなります。

飲食店といえば、ほかの店と営業時間が違う、あるいは、火を使うなどと、商店街からは嫌がられる側面もありましたが、時代の要請とともに、空き店舗に飲食店やカフェの進出を認める商店街が増えています。

高齢者施設や子育て施設が進出するケースも増えています。デイサービス施設ができ、子育て支援施設ができれば、そこに送り迎えが発生します。ついでに買い物ができれば、こんな便利なことはありません。こうした例は、地域のニーズと商店街の悩みごと(空き店舗や不足機能など)をうまく絡めて問題解決につなげているケースといえます。

地域の安心・安全に取り組むケースもあります。例えば、東京都世田谷区の明大前駅前商店街では、ひったくり・空き巣などが多く、商店街が中心となって昼夜のパトロールを始めました。あいさつや声がけにより、取り組み1年後には、犯罪は激減しました。治安が改善したことで地価も上がり、まち全体の魅力向上に大いに貢献している。商店街が地域の安心・安全を守るという+αの役割を発揮した例といえます。

また、商店街を実践的な教育の場として捉える地域も増えています。大学と地域が連携し、大学生たちが商店街のイベントなどにボランティアスタッフとして関わる、あるいは、地元の企業がインターンシップとして学生たちを受け入れるといった交流が増えることで、地域と若い人たちの新たな関わりが生まれる。そこから、さまざまな波及効果が期待できます。

買い物の場+αの役割が求められている

商店街には、「機能」「組織」「空間」という3つの捉え方があります。「機能」というのは、いってみれば商店街のものを売るという基本的役割。「組織」という場合には、商店街の人的資源が当てはまり、「空間」は、場所として商店街を捉えることになります。

これまでの商店街の機能といえば、買い物の場です。しかし、それでにぎわったのは、1980年代頭がピーク。80年代後半になると、郊外が開発され、人口は徐々に減ってきて、商店街の衰退がいわれ始めました。さらに、女性の社会進出や高齢化が進み、地域はさまざまな問題を抱えるようになる。そこで、商店街は今までは買い物の場として地域を支えてきたけれど、これからはほかの問題解決も一緒にやっていきましょうということになってきている。つまり、買い物の場としての機能+αの機能を発揮することが期待されているのです。

もちろん、まるごと全部引き受けてくださいというのではありません。前述した商店街パトロールのように人的パワー(組織力)を発揮しようというところもあるでしょうし、人は出せないが、場所(空間)を提供して、ここを使ってくださいというのもあるでしょう。商店街それぞれができる範囲のことを、少しずつやっていけばいいのです。

「コミュニティ機能」はじわりじわり効いてくる

コミュニティとは、一過性の人集めではなし得ません。日常的に地域の人たちが行き交う場所となってこそ、コミュニティといえるのです。

また、商店街の活性化という目線で捉えると、コミュニティは特効薬ではありません。いわば、漢方薬のようなものでじわりじわりと効いてくるものです。従って、売上や集客といった成果を性急に求めすぎないことが重要になります。これまでになかった機能を商店街が担うようになることこそ、ひとつの評価として捉えるべきでしょう。

商店街は生き物です。時代とともにどんどん変わっていくべきものです。ものを売ることが大事で、それさえきちんとやっていれば最低限評価してもらえるという時代は終わり、消費者も変われば地域も変わる、その変化に耳を傾け、商店街も変わっていかなければならないのです。

"商店街は滅びる"などと言われることもありますが、私は商店街の役割が変わってきているのだと捉えています。1つ2つの新たな動きから始まって、それがじわっと広がって、全体が変わっていくのです。そんな商店街が全国にたくさんあります。ですから、皆さん、くじけずにがんばっていただきたい。小さなことでも構いません。ぜひ、行動を起こしてみてください。

プロフィール

石原武政(いしはら・たけまさ)

大阪市立大学大学院経営学研究科教授、関西学院大学商学部教授などを務め、現在、流通科学大学商学部特別教授。研究テーマは「地域商業の活性化」「まちづくり」「商学の再構築」。通商産業政策史編纂委員。著書に『小売業の外部性とまちづくり』『日本の流通100年』(ともに有斐閣)、『商業・まちづくり口辞苑』(碩学舎)などがある。

商店街支援ノウハウの一覧へ