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全国の魅力的な商店街をつくるための取り組み事例をご紹介します! 商店街活性化事例レポート

(空き店舗)と(出店希望者)をマッチング 商店街がフルサポートしお試し出店 空店舗活用 創業促進

北九州の元気な市場としてその名が挙がる「黄金市場」。しかし一方で、店主の高齢化と後継者不足で空き店舗が増え続けているという。その状況に「待った!」をかけたのが、新しく誕生した青年部だ。若手を中心に団結して突き進む、新規出店促進の取組みを徹底解剖する。

商店街名 黄金地区商店連合会/福岡県北九州市

黄金地区商店連合会が取り組む「お試し出店」の模様。出店中の店の前に、商店街の常連さんが足を止める。取組みのキーパーソン・青年部部長の新開俊仁さんもオススメを伝えるなど接客をサポート

新進の青年部が空き店舗対策に全力投球

車が多く行き交う北九州市小 倉北区・三萩野交差点からほど近い黄金市場。戦前から市民の台所として親しまれてきたこの 市場は、生鮮食品店が密集した活気ある商店街だ。だが、近隣の大型スーパーとの競合、店主の高齢化や後継者不足などが徐々に深刻化し、近年は空き店舗も目立つように。約100の店舗のうち、3割でシャッターが下りたままになっている。

この危機に立ち上がったのが、商店街の若手たちだ。
「80 年を超える歴史ある市場を私たちの代で絶やすわけにはいかない。子どもたちが自ら『後を継ぎたい』と思える商店街にしなければ」(とり肉のワールド3代目店主、中江克さん)そんな強い想いから、7名の若手店主は、2017年4月、「黄金地区商店連合会青年部」を結成、北九州商工会議所のアドバイスを受けながら空き店舗の解消に向けて具体的に動き出した。

黄金地区商店連合会青年部の中心メンバー。おそろいのコンシェルジュ(創業案内人)ジャンパーで結束力をPR

活動は、現状把握の調査から始まった。青年部全員が手分けして情報を集め、それをもとに地図と空き店舗一覧表をつくり、家賃や内部の状況が一目でわかるようにした。出店者募集のチラシも試験的に作成・配布。これらの活動を通じて頻繁に顔を合わせ、意見を交換していく中で、生まれたアイデアが「貸店舗ツアー」と「お試し出店」だ。

この企画は、まず、新規出店に興味がある人に商店街の概要を知ってもらうことを目的に「説明会」を、次に空き店舗を内見する「貸物件ツアー」を実施。内見では、先述の調査過程でつながりのできた不動産会社の協力を得られることになった。そしてそのツアーの参加者の中から希望者を募り、貸店舗を使って数日〜1 週間程度「お試し出店」をしてもらう、というものだ。 「お試し出店者を青年部が全力でサポートすれば、黄金市場での出店のメリットを感じてもらえ、新規出店にもつながるという考えがありました」と中江さんは企画の狙いを語る。

実施が決定した後は、なるべく多くの参加者が集まるような環境整備に力を入れた。全国商店街支援センターの「トライアル実行支援事業」を活用し、その費用支援で貸店舗の賃料を無料に設定して出店のハードルを下げた。また、チラシやポスター、のぼりといった告知ツールだけでなく、青年部が着用する「コンシェルジュ(創業案内人)ジャンパー」も製作。商店街が一体となって出店者を歓迎するムードを演出した。市の広報、会議所の記者発表、各メンバーによる口コミの拡散などPR活動もぬかりなく行った。

百聞は一見に如かず 「貸店舗ツアー」で出店へ

そうして迎えた2018年12月1日の「貸店舗ツアー」には、予想をはるかに上回る21人もの参加者が集まった。商店街事務所に運営側と合わせて30人余りがひしめく中で始まった。「説明会」では、商店街の青年部と役員たちが商店街の特徴や地域の可能性を熱弁。ビジネスの専門家、商工会議所と市の職員も交えて、創業のポイントについてのレクチャーや創業支援策と空き店舗補助金に関する紹介も行われた。

続く「貸店舗ツアー」では、4 物件を案内。広さや設備、賃料などの説明に加え、その物件で商売をする利点や注意点なども伝えられた。青年部のコンシェルジュたちも、参加者から繰り出される質問に懇切丁寧に対応した。

貸物件ツアーを終えた参加者からは、「複数の物件を一度に見ることができ、自分のイメージとの比較検討ができた」「黄金市場の店主の方たちのパワーを直に感じることができた」「実際にどういう層の買い物客が多いのかを知ることができた」といった感想が挙がる。黄金市場での出店をより具体的なイメー ジで捉えることができたようだ。

最終的に、お試し出店者は5名に決定。洋菓子店や雑貨店など、黄金市場にない業種が出店するため、商店街に新たな魅力が加わり活性化につながるのでは、という期待感も高まった。

「お試し出店」で実感する 商店街の“良さ”とは

「お試し出店」は12月10日から23日まで実施された。冬の歳末イベント(抽選会)の開催時期とあって人通りが多く、お試しの店に立ち寄る人の数も多い、絶好のタイミングだ。

本誌が取材した二人の出店者(河野功平さん、溝田正行さん)は、ともに既存のビジネスの販路拡大を考えており、黄金地区での将来的な出店を検討するために応募したという。黄金市場での出店について二人は、「商店街の店主の方たちが気を遣ってくれて、ひっきりなしに声がけをしてくれます。常連さんも紹介してくれたりして、本当にありがたい」と声を揃えた。

「自分たちの企画で出店してくれたのがうれしくて、困ったことがないか、ちゃんと売上があるのか、何かと気になります。青年部一同が同じ気持ちで、自分の家族や従業員、店のお客さんに『お試し出店しているお店があるから行ってみて』と積極的に声がけしています。この取組みによって、商店街の良さは、〝ちょっとしたお節介や助け合いができること〞だと、改めて認識しています」とは、青年部部長の新開俊二さん(ホッテントット・コーヒー 店店主)。

細やかなサポートを行う商店街メンバーは、新しい場所に店を構えようと考えている者たちにとって、間違いなく頼もしい存在だ。長い歴史を持つ商店街が培ってきた人と人とのつながりが、空き店舗解消の最大の武器になっている。

お試しの期間を終え、貸店舗ツアー参加者の出店が決まるなど、プロジェクトは一定の成果を収めた。また、取組みが大きく報道されたことから、一般の創業希望者からの問い合わせも相次ぎ、複数の新規出店の見込みが立ちそうな状況だ。

連携と連鎖で変わる 地域の未来

新生青年部の活動を強力にバックアップしているのが、北九州商工会議所だ。会議所は 2014年より商店街に研修事業の活用を勧め、自らが事務局として関わりながら、その活性化に向けての活動を継続的に支えてきた。それが昨年度には青年部の設立、今年度には空き店舗の解消というかたちで花開こうとしている。会議所は、今回の取組みでも、日々の商売で忙しい若手店主たちがスムーズに動けるようにと、事務手続きなどをアシストしている。

加えて、市も、広報活動や出店における補助制度などの併走支援を通して、商店街の新しいプレイヤーを歓迎している。このように、関係団体が一丸となって空き店舗対策に取り組んでいる点もこの地域の強みだ。

商店街活性化に向けて精力的に動いている青年部。2019年2月現在ではメンバーの数は 10名に。周囲の目も変化してきており、メンバーが商店街を歩くと、「頑張ってるね」と声をかけられるようになったという。黄金市場に刺激を受け、市内の他商店街でも、空き店舗対策に本腰を入れようとする動きも出てきた。若き有志たちの力強い動きが、商店街を、地域を、変えよ うとしている。

【COLUMN 】支援事業の複数活用が成果UPの“鍵”

研修を重ねた仲間たちが 立ち上げた青年部

平成30年度に若手の店主たちを中心に空き店舗対策に乗り出した、福岡県北九州市の黄金地区商店連合会(黄金市場)。この市場商店街は、平成 26 年度より全国商店街支援センターの支援事業を組み合わせて活用しな がら、その活動を進めてきた。

平成28年度の「トータルプラ ン作成支援事業」は、若手世代が初めて参加した研修だ。この事業で、商店街は今後の活性化の軸足を〝個店力強化〞と定め、以後 3 年間、「繁盛店づくり支 援事業」に継続して取り組んだ。これらの研修への参加は、若手たちに活性化についての知識と気付きをもたらしたばかりでなく、研修をともにする仲間との信頼関係も育んでいった。彼らのなかで商店街づくりへの関心が膨らみ、平成29年4 月、「青年部」が立ち上がる。この新生青年部は、同年8月より「商人塾支援事業」に参加。これが躍進へのターニングポイントとなった。

商人塾で士気を上げ 新たな取組みに邁進

地域を牽引する次世代リーダーの育成を目的とし、複数の商店街から若手が集まる商人塾。そこで、黄金の若手たちは、旦過市場の青年部と出会った。商圏が重なり長い間競合関係にあった、小倉北区に位置するふたつの市場商店街の若手たちは、研修のなかで相互理解を深め、地域全体の未来のために協力していこうと決意する。「あの時、商店街の活動に本腰を入れて、黄金を、そして小倉をいい街にしよう、という強い気持ちが生まれました」 と黄金の青年部・中川和明さんは振り返る。
士気が高まった黄金の青年部は、平成30年度の「トライアル実行支援事業」を活用、空き店舗対策への取組みを本格始動させた。

青年部の立ち上げから共に活動し、商人塾支援事業の事務局も務めた北九州商工会議所(小倉サービスセンター)の村里元さんは、「この時代に商店街の青年部が結成されるということには、大きな意義がある。今後の小倉地区の活性化の弾みになるに違いない」と、その活躍に期待する。





 
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2019Spring(春号)に掲載されています。
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