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全国の魅力的な商店街をつくるための取り組み事例をご紹介します! 商店街活性化事例レポート

レトロな長屋をかっこよく、新しく。 地域資源 地域振興 各種連携 空店舗活用 コミュニティ

新潟市中央区の沼垂は近年、感度の高い老若男女が集うスポットとしてにわかに注目を集めている。その拠点となっているのが、かつて市場として使用されていた長屋通りを改築した「沼垂テラス商店街」だ。プロジェクトの仕掛け人である田村さん、高岡さんに話を伺った。

商店街名 沼垂テラス商店街/新潟県新潟市

街自体に活気がなければ 個人商店は成り立たない

株式会社テラスオフィス代表
田村寛さん
長屋通りの料亭老舗「大佐渡たむら」2代目にして、沼垂テラスの発起人

株式会社テラスオフィス専務取締役
高岡はつえさん
専務取締役兼、店舗統括マネージャーとして辣腕をふるう。田村さんとは実の姉弟

昭和レトロ感を生かして改築された店が軒を連ね、カップルや家族連れがにぎやかに行き交う沼垂テラス商店街。’15年春にオープンした新生商店街はいま、新潟の顔となりつつある。この光景を生んだのは、ある姉弟の独創的なまちづくりの手法だ。
同商店街の前身、旧沼垂市場通りは’10年の時点で、わずか6店舗が残るのみとなっていた。高度経済成長期には大工場が集い、そこで働く人々で活況を呈したものの、やがて工場は次々と撤退。’80年代以降は高齢化と郊外化が進み、それに伴って市場通りは衰退。空き店舗が目立ち始め、はてはシャッター通りと化してしまう。

同地で50年以上続く料亭に生まれ育った田村寛さんは、故郷の盛衰を見てきたひとり。大学進学を機に上京、’93年に帰郷して家業を継いだ際に、あらためて沼垂の不況に直面したという。
「かつての活気は見る影もなく、人の流れは完全に途絶えていました。危機感を覚えて再建を模索するうち、『街自体に活気がなければ、個人商店は成り立たない』と痛感したんです」

一念発起した田村さんは’10年6月、市場協同組合のもつ長屋の一画を借り、総菜店「ルルックキッチン」をオープン。実際に出店し、場のもつ魅力を再確認したことから、賛同者を求めて動き出した。ところが3店舗目まで新規開業が続いたところで大きな壁が立ちふさがる。協同組合の規約で、それ以上の出店にストップがかかってしまったのだ。ここで田村さんは、思いもよらぬアクションをとる。その長屋の土地建物の一括買い上げだ。

「3店舗できた段階で、出店の問い合わせがぐっと増えていました。なので、いま潮目を変えてはいけないと。組合からの申し出もあったので、覚悟を決めて、丸ごと買い上げることにしたんです」
大ばくちに打って出た田村さんに心強い協力者が現われる。実姉の高岡はつえさんだ。高岡さんは当時勤めていた会社を辞め、その職能を活かし実務面で弟のサポートに回ることに。田村さんの老舗割烹2代目としての信頼も地元銀行からの融資をスムーズにし、’14年3月に長屋をすべて買い上げた。そしてふたりは、商店街の管理と運営を担う「株式会社テラスオフィス」を立ち上げ、「ここでしか出会えない人・モノ・空間」をコンセプトに、自らが所有する物件に新規の店子をどんどん呼び込むスタイルで、商店街再生を推し進めていく。



感性が共鳴し、コンセプトが現実に

晴れて’15年4月に沼垂テラス商店街がオープン。その時点で、店舗数は24と急成長を遂げていた。とはいえ、拡大を急ぐあまり誰彼かまわず出店希望者を受け入れたわけではない。

「出店希望者には事業計画書を提出してもらい、採算性などを見させていただきました。夢はあるが計画性がないという方には、商工会議所や県の創業支援窓口を紹介し、厳しい指導を受けていただきました。そこでへこたれなかった方が、出店されているんです」(田村さん)
こうしたプロセスを踏んでいるため、出店してから3年以内に廃業、というケースはここでは皆無だ。

沼垂テラスでは、店舗の改修についての明確なルールが定められていない。したがって、店舗の外装内装には各店主の個性が存分に発揮される。しかしそれにもかかわらず、商店街全体の統一感はレトロモダンで完璧に保たれている。「形式的には設計図面を提出してもらいますけど、『あるものを上手く活かしてほしい』とだけ伝えてあとは口を出していません。『この人はセンスがいいな、何か面白いことをやってくれそう』と感じた人に出店してもらっていたら、結果として統一感が生まれました」(高岡さん)
出店希望者と丁寧に向き合った結果、コンセプトに沿った商店街の運営が可能になり、唯一無二の商店街が誕生したのだ。

長屋の空き店舗がほぼ埋まった’15年末には、沼垂テラスからほど近くにサテライト1号店がオープンした。サテライトの誘致では田村さん・高岡さんは大家との交渉を担当。沼垂テラスの実績が評価され、賃貸市場に出ていない味のある物件と借り手とのマッチングが進んでいる。
サテライトは、’18年2月時点で3店舗。長屋に店は構えてなくとも、商店街のコンセプトを共有し、長屋の店主たちと協力して顧客を紹介し合ったり、商店街のイベントに積極的に参加したりしている。新規出店についての問い合わせが引きも切らない現状から、サテライトは今後拡張していくことだろう。
その景観やコンセプトが評価され、沼垂テラス商店街は’17年、グッドデザイン賞を受賞した。しかし、課題もある。現時点では、集客は休日に集中し、平日は人通りがまばらなことも。

「商店街の本質は普段づかい。近隣住民がもっと気軽に使ってくれる商店街を目指したい」と語る高岡さん。
一方、田村さんは、さらなる事業拡大に向けて動き続ける。「Uターン組や移住者から沼垂に『住みたい』との要望があるので、地元の大学とタッグを組んで空き家調査を行うプロジェクトを立ち上げる予定です。これを取っ掛かりに、街にさらなる活気を取り戻したいですね」

大きなビジョンを描く弟と、実務家の姉。そんな名コンビが手がけるまちづくりは、どんな進化を続けるのだろうか——。


       市場通りだった名残りで現在も多くの猫が暮らす沼垂。それにちなんだ新名物「沼ネコ焼」が現在、人気急上昇中。

 

若き店主たちのチャレンジ、広がってます。

穏やかな相貌に熱いパッションを秘め、ここ沼垂で理想の店舗づくりに日々格闘する若き店主たち。その人となりをご紹介。

     

ゲストハウス「なり」
大桃理絵さん
築90年の町屋を自ら改築し、商店街待望の滞在拠点・ゲストハウスをオープンした大桃さんは、
新潟市出身のUターン組。「新潟の魅力を海外に発信していきたい」






KADO・shoe repair & beer stop
小島俊輔さん
取材時は新規出店に向け自ら店舗をリノベ中だった小島さんは、
靴修理とクラフトビールを融合させた個性的なお店で勝負。「気軽に立ち寄れるスペースにしたい」






BOOKS f3
小倉快子さん
写真集を中心に小倉さんがセレクトした新刊・古書を扱う。定期的に個展を開催し、
時に写真家を招くことも。「東京に行かずとも、アートにじかに触れられる場所にしたい」






and wood
遠藤大樹さん
無垢の床材を扱うショールーム。遠藤さんは海外で木材を調達・加工、日本に輸入する。
「妻の子育て負担を軽減すべく、東京から移住しました。新潟は暮らしやすいですよ」





★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2018 Spring(春号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。
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