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全国の魅力的な商店街をつくるための取り組み事例をご紹介します! 商店街活性化事例レポート

厳しい自然も最大の武器に、柔軟な発想で魅力を再発見! 地域資源 地域振興 販売促進 個店活性 その他

年間累積降雪量が10mを超える西和賀町。その「雪」を生かしたプロジェクトが、今注目を集めている。地元食材でつくった商品を「雪」の物語としてPRする手法で、商品と町の知名度は一気に上がる。そんななか、商店街も豊かな地域資源を背景に活動を本格始動させた。

商店街名 西和賀町+協同組合湯本商店会/岩手県和賀郡

西和賀町が主導する「ユキノチカラプロジェクト」から生まれた商品の一部。すべて雪の恩恵を受けた素材を使用。地元の事業者が、得意分野の商品を展開する

厄介者を味方に変えた 町のプロジェクト

「ユキノチカラプロジェクト」を推進する、西和賀町ふるさと振興課長の畠山幸雄さん

 秋田県との県境に位置する岩手県随一の豪雪地帯の西和賀町は、四方を山に囲まれた自然豊かな土地だ。泉質多彩な温泉郷でもあり、町の玄関口JR北上線の「ほっとゆだ」駅は、日本で初めて温泉施設を併設した駅としても知られている。しかし、さまざまな地域資源をもつこの町の人口は減少の一途をたどり、現在は5800人ほど。商店街もひとつしかない。

 そんな小さな町の創生事業が最近注目を集めている。「ユキノチカラプロジェクト」(西和賀デザインプロジェクト)は、地元の事業者、デザイナー、信用金庫と町が協働して’15年から進めているプロジェクトだ。西和賀に降る「雪」をイメージしたパッケージ展開で地元商品の注目度を上げ、町の認知向上へとつなげている。この試みで最も目を引く点は、発想の転換だ。今まで町の経済活動にとって厄介なものとみなされていた「雪」を自らのブランドとして磨き上げ、プラスの存在へと昇華させた。








2)「ユキノチカラプロジェクト」を推進する、西和賀町ふるさと振興課長の畠山幸雄さん

「降雪量の多い地域に住む私たちにとって雪はあたりまえのもの、しかもどちらかというと、冬の生活を脅かす迷惑なものです。しかしこのプロジェクトでは、雪を自分たちの大きな財産として捉えます。そのアイデアを初めて聞いた時は、目からうろこの心境でした」と、西和賀町ふるさと振興課の畠山幸雄さんは語る。

 たとえば特産の西わらびは、冬の間雪の重みに耐え抜くことで、春にたくましく芽吹くが、その時のエネルギーが、粘り気の強いとろりとした独特の風味になると言われている。また、豊富な雪どけ水によって野に草が茂り、それを食べる牛から良質のミルクが採れることで、美味しい乳製品ができ上がるのだ。こうした地元の食材からつくったオリジナル商品。その一つひとつに雪のイメージをのせ、商品の魅力、ひいては地域そのものの魅力として発信するこのプロジェクトは、西和賀の豊かな恵みが実はこの地に降り注ぐ雪のおかげだったのだ、と町民が気付く機会にもなった。


ユキノチカラプロジェクト

プロジェクトの商品はほっとゆだ駅前にある「湯夢プラザ」、道の駅錦秋湖のほか他県の百貨店でも販売されている

地域資源を活用した魅力あるまちづくり、ブランドづくりを行うため、信用金庫と西和賀町の声がけで’15年よりスタートした「ユキノチカラプロジェクト」。

酒や米、蕎麦や菓子など、西和賀の自然が生み出す〝美味しい食〞を商品化。斬新なコンセプトが注目を浴び、販路の拡大を中心に成果を上げている。

’17年は同町の冬の最大イベント「雪あかり」に連動したモニターツアーを開催。’18年は雪の下で納豆を発酵させる独自文化「雪納豆」の体験ツアーも行う。








   

左から 
・西和賀町ふるさと振興課では、若い女性メンバーも活躍。
・建設中の交流施設で、プロジェクトの新しい展開の可能性も。
・「ユキノチカラ」はPR紙の製作にも力を注ぐ


ユキノチカラを 個店のチカラへ

 ’17年度、プロジェクトには町内の12の事業者が参加。町の商店街、湯本商店会に店を構える「お菓子処たかはし」は、すでに定評のあったフィナンシェに地元で採れるそば粉と蜂蜜を加えて商品名とパッケージをリニューアル。パッケージは、雪の結晶がモチーフの洒落たデザインとした。「今までのパッケージ制作は、すべて包材店に印刷代込みで、無料同然で丸投げしていました。デザインに手をかけるという意識がまったくなかったんです。でもこのプロジェクトに参加して、デザイナーと話を詰めながらパッケージデザ
インを決めたところ、売上が劇的に伸びました。既存の商品をリニューアルしただけで、新商品を開発したわけでもないのにこんなに売れるようになるとは驚きです。コンセプトをきちんと決めて、それに合わせてデザインすることの大切さを学びました」と店主の高橋忍さん。
 同商店街からプロジェクトに参加しているもうひとつの店「工藤菓子店」も、雪玉を彷彿させる菓子で、飛躍的に売上を伸ばしている。
「プロジェクトが知られるようになって全国の百貨店などの物産展に出展する機会も増え、販路がぐんと拡大しました。プロジェクトが将来終了しても、この販路は自分たちの財産として残ります」(工藤美代子さん)
 ’18年度も12事業者は継続して参加し、商品のラインナップなどより充実させる予定。プロジェクトは益々注目を浴びることだろう。


個店のチカラ

商店街で60年以上菓子店を営む「工藤菓子店」と、同じく老舗の「お菓子処たかはし」は、湯本温泉が一大観光地だった頃から、旅館のお茶うけ菓子や土産物を製造。「ユキノチカラプロジェクト」が始まる前から、西和賀の魅力を発信すべく地元菓子店(3店)が合同で行っていた「西わらび餅」の製造・販売に参加していた経緯もあり、プロジェクト開始直後から参加事業者として抜擢された。地元食材の魅力を知り尽くした彼らの情熱、長年培ってきた菓子づくりのノウハウがプロジェクトに集約される。

  「工藤菓子店」 工藤美代子さん  

  ほろりん
 
  西和賀の寒暖差ある気候で育った蕎麦は香りが高く、風味も豊か。
  そのそば粉に胡桃や和三盆が加わったお菓子は、まるで雪玉のようなかわいさ
                                      



    「お菓子処たかはし」 高橋忍さん
  
     金と銀のフィナンシェ

  湯本商店会で菓子店を開いて55年。30年前から店の定番だったフィナンシェを、
         地元産の蜂蜜とそば粉を加えてリニューアルした

    


豊かな地域資源は 商店街活性化策にも

商店会の通り。「ユキノチカラプロジェクト」とのリンクの仕方も今後のカギだ

「ユキノチカラプロジェクト」に並行して、西和賀町にはもうひとつ大きな可能性を秘めた動きがある。商店街活性化の動きだ。

 正岡子規が句作にも訪れた開湯400年の温泉地にある湯本商店会は、前述の菓子店2店舗の他、時計・めがね店、電器店、理髪店など計14の店舗を有する商店街。もともと商圏人口が少ないうえに地域は高齢化・過疎化が急速に進行、温泉旅館の廃業も著しく、地元客、観光客がともに激減しているという厳しい商環境下に置かれている。その商店街が、起死回生の手立てとして、地域のもつ豊かな資源に目を向けた。

「店にいてものを売るだけでは、私たちは生き残れません。周りの人たちがこの場所に来てくれるような仕掛けをつくり、それを商売につなげていかなければ。そこで改めて私たちの周りを見てみると、そこには温泉があり、きれいな山と川がある。そんな魅力溢れる地域資源を使い、商店街として何かできないかと考えたんです」(湯本商店会理事長・栁沢安雄さん)

 商店街は’09年から町営の共同浴場「丑(うし)の湯」の指定管理者を務めてきたが、’15年に「焼地台公園キャンプ場」の管理運営も開始。それらの施設を軸にした交流人口の増加と、それに伴う商店街の取扱品の販路拡大について戦略を練ってきた。

 町のプロジェクトと急成長する個店。その個店をもつ商店街の挑戦は、すべて西和賀の豊かな自然を背景とするものだ。それらすべてが共鳴し合う時、この地域は一体どんな魅力を発するのだろうか。

商店街のチカラ

     

湯本商店会では毎月7日は、組合メンバーの会合の日と決まっている。’17年の6月から12月にかけての7日は、商店街のビジョンづくりの日となった。支援センターの「トータルプラン作成支援事業」を活用した話し合いでは、地域の強みと弱みの発見から始まり、ホームページの立ち上げ、植栽の取組み、キャンプ用品の貸し出し、移動販売の実施等のアイデアの抽出へと進んでいった。中小企業団体中央会、商工会からの客観的なアドバイスも加わり、ビジョンはより現実味を帯びていく。’18年は、これらのアイデアを実行に移すための重要な一年になるだろう。

   

左から
・「トータルプラン作成支援事業」を活用した話し合いの様子
・多くの地元住民が利用する「湯元温泉 丑の湯」。2階の共有スペースは商店会の会議所としても活用。
・「焼地台公園」のキャンプ場で交流人口増加を狙う。植栽活動や移動販売など取組みの幅が広がる。






 



★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2018 Spring(春号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。
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