facebook page

全国の魅力的な商店街をつくるための取り組み事例をご紹介します! 商店街活性化事例レポート

職人の卓越した技×商店街の自由な発想 手づくりで生んだカバンストリート 地域資源 地域振興 販売促進 創業促進

全国的なカバン産地にもかかわらず、観光資源にできない。そんな課題を抱えた宵田商店街は、商店街ならではの信頼と発想を武器に、「カバンを買える街」という付加価値を身に付けていった。地域資源はいかにして観光資源へと変わるのか。そこには地道な取組みがあった。

商店街名 カバンストリート(宵田商店街振興組合)/兵庫県豊岡市

カバンストリート内の「Alter Ego(オルターエゴ)」の店内に並ぶ、美しきカバンの数々。                      ストリートでは逸品にさまざまな場所で出会える。ただ、こうした光景が見られるようになったのは、ここ10年来のこと

職人たちの想いをのせカバンでまちづくり

カバンストリートの看板から広がる宵田商店街は適度なコンパクトさ

カバンストリートという看板を目印に、約200mの道々にはカバンに関連する店が軒を連ねている。公道にはカバンをあしらった郵便ポストやベンチが、歩く人々の目を楽しませてくれる。豊岡市宵田商店街、通称「カバンストリート」の日常風景だ。

その他の業種の店でさえ、カバンに関連するモノやデザインを施しており、豪勢な仕掛けこそないが、街には温かみがあふれている。それは、これが商店街の人々が手づくりで生み出した光景だからかもしれない。

「家業のクリーニング店を継ぐため、外で修業をして35歳で戻ってきたら、シャッター街になっていて。危機感を持った人たちの間で、この街をどうすべきか、さかんに議論されていました」

宵田商店街振興組合理事長の衣川克典さんは、15年前をこう述懐する。議論から生まれたのが、世界でも有数の豊岡のカバン産業を生かした「カバンストリート事業」構想だ。
「カバンの関係企業のほとんどはOEMメーカーや卸業者など。消費者とは直接的な関係
を持たない産業だった。だから、我々の商店街で、我々のカバンを売っていこう、と」

ただ、多くの商店街がそうであるように、志はあれど活性化にかける予算がなかった。だが、ここからの創意工夫が、カバンストリートの真骨頂だった。


街にはカバンにちなんだ仕掛けがたくさん!




固い信頼で協力を得て自由な発想で発信力向上

まず、伝説的な職人と言われる植村美千男さんに呼びかけ、’04年に「植村美千男のかばん工房」がオープン。これを嚆矢として、地道に新規店舗の出店誘致を続ける。その一方で、カバン以外の商店主に協力してもらい、店のコーナーで豊岡のカバンや関連商品を販売した。これらの商品は、卸の組合から提供してもらったものだ。こうした〝協力〞について「やっぱり、信頼感が大事ですよね。毎日顔を合わせて挨拶するような、長い時間をかけて育んだ関係性があるからこそ、店主のみなさんは協力してくれました。また、我々は商店街という、カバン業界とは異なる組織。業界の理解と協力を得るために、『カバンの街にしたい!』という強い想いを伝えました。結果、卸組合や工業組合はじめ各種団体も快く協力してくれました」

’11年からはそれまで定期的に行っていた種々のイベントを集約した「カバストマルシェ」を開催し、地産の農水産物や民芸品の販売と合わせてカバン職人によるワークショップや出店を実現。「イベントは街に〝動いている感〞をもたらす」と衣川さん。マルシェで手応えを感じた職人が、カバンストリートで本格的に出店したケースもあった。PRは、地元の新聞にマメに取材してもらうなど、極力費用がかからないかたちで行ってきた。マルシェは現在、延べ60回以上を重ねている。


宵田商店街振興組合理事長
衣川克典さん

こうした地道な取組みが花開き、いまではカバン関連店舗は13を数えるほどになり、なかには世界的なデザイン賞を受賞するクリエイターの店舗も。来街者も着実に増えていった。’14年には豊岡カバンの魅力発信を担うランドマーク的な総合施設「トヨオカカバンアルチザンアベニュー」が商店街にオープン。併設の専門校「アルチザンスクール」では次世代のカバン職人たちが育ちはじめている。

「私たちはまちづくりについて素人です。だから、あまりルールは設けずに、面白いアイデアがあればまずやってみる。その積み重ねです。ただひとつの願いは、カバンの街として多くの人に満足してもらうこと」

本物のプロの技に付加価値を与え、実際に出会える場所をつくり、着実に発信していくことで、想像以上の効果を生み出しているカバンストリート。この取組みは、生活者や観光客と日々接し、最もニーズを把握している商店街の人々だからこそなしえたことかもしれない。

 
     

’64 年の東京五輪で聖火トーチ用のカバンを手がけるなど、業界では伝説的な職人として知られる植村さん。あらゆるカバンを知り尽くしたその手腕を頼りに、店には全国から修理依頼が届く。「この店がカバンストリートのはじまり」(衣川さん)と、地域からの信頼は極めて厚く、技も惜しみなく伝える。





革カバン有名店で修業後、「カバストマルシェ」への出店をきっかけに開業。手がけるカバンはどれも一点もののオーダー品で、革の美しさが引き立つ。熱意ある人柄でカバンストリートの次のリーダー候補だ。「自分の店にお客さんの好みの品がなければ他店も紹介できるのがカバンストリートの良さ」





田舎暮らしがしたくて豊岡にやって来たという中野さん。こちらに来てからカバンづくりを始め’16年3月に店をオープン。カジュアルな商品群が人気を集めている。「もっとカバンの店が増えて街が盛り上がってほしい」





本文中でも触れた「トヨオカカバンアルチザンアベニュー」は1Fがショップ。その3Fでは、日夜職人を目指す若者たちが厳しいカリキュラムをこなして腕を磨いている。「ここから巣立った人たちが、将来は豊岡で店を開いてくれたら」(衣川さん)と、人材育成の面でも期待は大きい。






 
この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2018 Spring(春号)に掲載されています。
 
▼▼▼
商店街活性化事例レポートの一覧へ