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全国の魅力的な商店街をつくるための取り組み事例をご紹介します! 商店街活性化事例レポート

活動×運動×交流で高齢者も商店街も活性化 各種連携 子育て・高齢者支援 安心・安全 コミュニティ

北海道の陸の玄関口、豊富な海の幸が集う街・函館を代表する商店街が、函館朝市だ。観光スポットとしても有名な朝市では現在、地元の高齢者に向け「健康×お買い物×食事」を組み合わせた企画「おでかけリハビリ」が好評だ。新たな客層の開拓とともに朝市、参加者、医療関係者にも好影響をもたらしている。

商店街名 函館朝市協同組合連合会/北海道函館市

“おでかけ”が介護予防に、“お買い物”が刺激になる。楽しく健康になれるならそれが一番。                       おでかけリハビリでみんな笑顔になってます。

おでかけ=健康増進、朝市の魅力を地域に還元

「日々のお買い物は、介護予防の宝庫といわれています」
「日常的に良い姿勢を保つ簡単な方法を試してみましょう」
函館朝市のイベントホールで理学療法士の解説に真剣に耳を傾けるのは、「おでかけリハビリ」に参加中の、函館近郊の戸井地区で運動サークルに所属する60〜80歳代のみなさんだ。
約250店舗がひしめく函館朝市は、年間約200万人もの観光客が訪れる函館名所のひとつ。全国でも有数の水産都市である函館の近海の鮮魚が揃うほか、農家の野菜直売コーナーや、朝市名物の海鮮丼を中心にしたフードコートも充実している。戦後以来、市民の台所として発展してきた、この歴史ある朝市の近年の課題は、観光化にともない遠のいた地元のお客さんに再び足を運んでもらうこと。その解決策として、函館朝市協同組合連合会事務局は、鳥取県でモデルケースとなっていた「ショッピングリハビリ」に着目し、函館流にアレンジ。’17年4月、おでかけリハビリがスタートした。

「おでかけで元気になろう」がテーマのこの取組みは、市内近郊の高齢者や、要支援・要介護認定者を主な対象としている。現在実施されているプログラムの内容は、介護施設や近隣の役場の送迎車で朝市に到着した参加者グループが、介護予防教室などの無料レクリエーションを受講した後に、自由に買い物を楽しみ、最後は全員で昼食をとって送迎車で帰路につくというもの。
介護が必要な参加者には介護職員またはボランティアスタッフが付き添うほか、車椅子や歩行支援機能付き車椅子や歩行機の貸出もあるため、歩行が困難な方でも安心して参加できる。

おでかけリハビリ参加でもらえるコイン。10枚貯まると500円の商品券と交換できる

参加者が買い物を楽しむ仕掛けも充実している。店先で参加証を提示すれば、店主が積極的に割引や試食サービスをしてくれるほか、「おでかけコイン」というポイントシステムも導入。プログラム参加時と1000円分の買い物ごとにコインが一枚付与され、10枚貯まると500円の商品券と交換できるという仕組みだ。
おでかけリハビリの開始から1年弱ですでに参加者数は延べ700名を超え、その内約半数がリピーター。参加者の家族や介護職員、ボランティアの朝市への再訪回数も増え、売上増加にもつながっている。

リハビリ効果にも手応えがみられた。介護施設でリハビリを拒否してほぼ歩かずにいた高齢者が、朝市では買い物を楽しんで生き生きと場内を歩き回り、その後リハビリに打ち込めるようになったなどの事例も報告され、介護の現場からの期待も高まる。こうした点が評価され、おでかけリハビリは日本総研主催の「RE‐CAREアワード2018」(※)で審査員特別賞を受賞した。道内だけでなく全国からも、注目されるようになっている。

(※)公的介護保険外で「介護予防、フレイル予防、高齢者リハビリ、自立生活支援」を実現しているサービス・製品の周知と保険外サービスの発展を目的として、すぐれたサービス・製品を表彰するアワード

冒頭で紹介した戸井地区からの参加者は「何年かぶりの朝市でのお買い物が楽しかった」「こういったイベントがあると朝市に来られるので、また参加したい」と声を弾ませていた。同行していた社会福祉協議会の保健師は「戸井地区は函館の中心部から車で約一時間。買い物に出られない高齢者のニーズと、地元の人に来てもらいたい朝市側の意図がうまくマッチングしています」との見解だ。

商店街から発信する新しい医商連携のサイクル

おでかけリハビリ推進協議会 副会長
平山医院 リハビリテーション部門 竹内光さん

この取組みは、地域や商業と幅広く連携している点が特長だ。たとえば、’17年10月に発足したおでかけリハビリ推進協議会は、理学療法士、作業療法士やタクシー会社など17の企業と、市内や近郊の老人介護施設、公的機関、町内会など幅広いフィールドから構成されている。

協議会副会長で、理学療法士でもある竹内光さんは、「朝市でのレク参加やお買い物は、社会参加しながらリハビリできるというのが利点です。国の介護保険の適用範囲が縮小されつつある今、お年寄りが通所リハビリからの卒業を求められているものの、その後の買い物の自立は大きな懸念材料になっています。朝市だけでは不十分ですが、街全体にこのプロジェクトが広がれば、買い物難民の解消にもつながると確信しています」との展望をもつ。

現在は函館朝市のほか、市内12のデパートやスーパーなどの商業施設でもおでかけリハビリを開催。いずれの施設でもCSR(企業の社会的責任)としての地域貢献という志のもと連携が深まっており、今後も開催施設は増える見込みだ。

 

今の課題に向き合いながら先を見据えてシステム構築

おでかけリハビリ推進協議会 会長
函館朝市協同組合連合会
事務局長 松田悌一さん

これら複数のつながりを取りまとめ、朝市内での協力体制をつくり上げたのが、函館朝市協同組合連合会事務局長で、おでかけリハビリ推進協議会会長の松田悌一さんだ。

「おでかけリハビリは朝市だけの利益を優先して行うものではなくて函館という地域全体への貢献だ、ということは朝市でご商売されているみなさんにも理解していただいています。もうけ主義に走るのではなく、地域の人たちに健康になってもらうことが第一の目的。そういうスタンスで取り組んでいくことで、より多くの方にこのプロジェクトに参加いただけますし、その結果、朝市のイメージも『観光客向けだけでなく市民にも開かれている』と認識していただけると思うんです。そうなれば、朝市で買い物をしてみたいという地元のお客様も増え、自分たちの活性化にもつながるはずです」

そう、地域全体への貢献でありながらも、朝市自体の魅力の訴求にもなり、集客にもつながっていくことが、このおでかけリハビリの大きな強みだ。

車椅子の使い方を学ぶボランティアスタッフ。参加者の笑顔を見ることが、彼らにとってもやりがいに

そんなおでかけリハビリの最大の課題は、付き添いスタッフの確保である。介護の人材不足が深刻さを増している日本では、この取組みへのニーズが高まっても、介護施設が十分な人材をそれに充てることが難しい。
この課題に対処するため、松田さんは、ボランティアの開拓に乗り出した。市を介して社会福祉協議会との連携を図ったり、ボランティア説明会を開催して新聞記事で呼びかけたりと、積極的に働きかけている。それと同時に、施設に従事する介護職員に対しても参加意欲を高める仕組みづくりをと、おでかけコインの制度拡充を検討。証券会社や保険会社とポイントの有効活用について話し合うなど、具体化に向けて動いているという。さらには、介護施設に属さない個人でも気軽に参加できるように、町会会館やサービス介護向け住宅などおでかけリハビリの始発点となる施設との連携体制も整えていく予定だ。

参加者、協議会、ボランティア、朝市関係者、介護施設……各々がやりがいを見出しながら前進している朝市発のおでかけリハビリ。その効果はあらゆる人や場所に及び、函館を元気にしていくだろう。


 



 
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2018 Autumn(秋号)に掲載されています。
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