facebook page

全国の魅力的な商店街をつくるための取り組み事例をご紹介します! 商店街活性化事例レポート

超高齢化社会への挑戦、出前商店街という“解” 子育て・高齢者支援 安心・安全 情報発信 コミュニティ

店舗がなくなった地域の高齢者に、買い物とふれあいを楽しんでもらうことを目的に、秋田県のにかほ市商工会が「出前商店街」を始めたのは9年前。いまでは高齢者にとってなくてはならない存在となっている。厳しい高齢化社会を迎える地方の商店街はいかにあるべきか、そのヒントを探る。

商店街名 にかほ出前商店街振興会(にかほ市商工会)/秋田県にかほ市

生活用品、生鮮食品や花など、幅広い買い物が可能。

細やかな思いやりで心地よい空間を創出

足元が覚束ないお客さんにさっと手を差しのべる店主

警察が犯罪防止啓発活動も行っている。

きっかけは’08年、にかほ市商工会を中心に学識経験者らが集まり、市の将来のビジョンを検討したことに始まる。
「人口が減り、商売をあきらめる人が多かった。そうすると高齢者はますます買い物に行けなくなり、交流もなくなるのでいわゆる〝情報弱者〞になってしまう。そこに、防犯上のリスクも生まれる。そんな悪循環をどうにかしたかった」と、当時を振り返るのは、にかほ出前商店街振興会の前会長・遠藤強さん。その課題の解決策として、出前商店街の構想が生まれた。
「高齢者に対して自分たちは商売人としてどんなことができるのか、高齢者はどんなことを喜ぶのか、ということを突き詰めて考えました。買い物や井戸端会議ができて、店主からも情報を得られる場が大事。つまり商店街が必要だ、という結論に達したんです」

こうして’10年、店のない地域に出向いて商品を販売する「出前商店街(おらほのふれあいべんり市)」が開催されることになった。以来、毎年4〜12月に月2回、市内の公民館を転々としながら、メンバーの25事業者のうちの10〜16事業者が交代で買い物と交流の場を提供。物販店だけでなくマッサージや美容室などサービス業も出店することで、商店街らしい多様性を演出している。
今夏で開催数150回を超え、長く地域の人々に親しまれている出前商店街。その人気の理由は、随所に見られる〝お年寄りへの思いやり〞だ。

交流スペースでの昼食。話が弾む。

たとえば出前商店街の会場では、必ず交流スペースが設営される。そこで高齢者同士でコミュニケーションをおおいにとってもらいたいからだ。そして、そのスペースに滞留しやすくなるよう、町の食堂が出張し弁当を販売するなど「食」が提供される。地元の店の味に舌鼓を打つことで、話も弾むようになる。

生活に役立つ情報も提供している。「まちゼミ」のスピンオフといえる「出前講座」では、目利きの店主ならではの知恵を伝授。さらに、防犯面でも意識向上につながる仕掛けが見られる。たとえば包丁研ぎサービスは建築業者が担当しているが、それは「地域の建築業者を知っていれば、リフォーム詐欺に騙される確率がうんと下がる」から。地域住民が集まるこの機会を活かし、警察署も毎回参加して振り込め詐欺や交通安全に関する啓発活動を行っている。
また、協賛店から出された景品が当たる「お楽しみ抽選会」は、会場内の店で買物をするほど当たる確率が高くなる人気企画で、参加者のワクワク感を高める。
こうした充実の内容に惹かれ、毎回50人もの地域の高齢者がやってくる。その多くがリピーターだ。

  
       左から、出前商店街振興会の前会長・遠藤強さん、会長・齋藤伸二さん、にかほ市商工会事務局長の佐々木広美さん
 

店を知ってもらい日常につなげる

抽選会の参加賞のポケットティッシュは、各店舗のPRにも。

ところで、事業者たちにとって、この出前商店街はどのようなメリットがあるのだろうか。参加店からは、「近所の電気屋さんが減少しているなか、信頼できるお店で購入したいと考えている方が多い。そういう方たちの困りごとに応えることで、自然と営業につながります」(仁賀保電機工業)と新規顧客開拓につながるという声や、「お客さんとたくさん話す機会があるので、ニーズに合わせた仕入れをするようになりました」(齊藤與作商店)と商売の工夫につながるという声があがる。しかし何より事業者たちに共通するのは、〝やりがい〞だと同振興会会長の齋藤伸二さんは言う。

「お客さんの喜ぶ顔を見ると、大きな儲けにつながらなくても、自分の商売が必要とされていると感じられる。それが一番のモチベーションになっています」
 超高齢化社会へと突入した日本。地方では特にその傾向が強い。そこで、商業者と商店街ができることは何か。出前商店街がひとつの解を与えてくれている。

   買い物を通じた交流こそ出前商店街の醍醐味。
 
 
 

 



 
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2018 Autumn(秋号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。
▼▼▼
商店街活性化の情報誌「EGAO」

商店街活性化事例レポートの一覧へ