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全国の魅力的な商店街をつくるための取り組み事例をご紹介します! 商店街活性化事例レポート

ウェルカム、高齢化。社会貢献で“お得意様”増大を 地域振興 子育て・高齢者支援 コミュニティ

「ボランティアバンクおたすけ隊」、「楽楽屋」、「まるごと大家族」など、数々の取組みで全国から注目を集める埼玉県秩父市のみやのかわ商店街振興組合。高齢化社会に対応し、むしろそれを特長として打ち出す斬新な発想がそこにはあった。そしてそれが、新たな「お得意様」づくりにつながっている。

商店街名 みやのかわ商店街振興組合/埼玉県秩父市

【コミュニティづくり】 まるごと大家族

元気な高齢者の力を地域貢献につなげる

【ボランティア】ボランティアバンクおたすけ隊

秩父鉄道秩父駅前通りと、駅前交差点周辺の南北200mにわたり広がるみやのかわ商店街。歴史的建造物が多く残る情緒のある街並みや、秩父夜祭の開催など、観光客が多く訪れる地だ。その一方で、周辺住民は高齢化が進んでおり、高齢者と地域との接点をいかにもたらすかが課題となっていた。その解決に向け立ち上がったのが、みやのかわ商店街振興組合だ。

「どこよりも人と人の絆を大切にし、地域に住む人を知っているのは商店街。だからこそ、商店街ならではの共助の仕組みをとおして、高齢化社会に対応したサービスや事業を発信したいと考えました」
そう語るのは、多くの取組みを創出してきた同商店街振興組合前理事長の島田憲一さんだ。同商店街の対高齢者の取組みは、大きく分けて「ボランティア」「買い物弱者支援」「コミュニティ形成」の3つがある。

「ボランティア」の取組みとして挙げられるのは、’07年より始まった「ボランティアバンクおたすけ隊」だ。仕組みとしては、有志がボランティアバンクに登録。利用者からの依頼に応じて、登録者が派遣される。おもな依頼は病院や買い物の送迎や庭の手入れ・掃除などの家事手伝い、買い物代行などで、ボランティアをすると1時間500円のポイントがたまる。1000円分のポイントは秩父市共通商品券「和同開珎」と交換でき、商店街はじめ市内での買い物に利用できる。そのため、この取組みによる商店街への波及効果も少なくない。なお、サービスの利用者は事前購入したチケット(1時間分800円)で支払う。

コイン型商品券「和同開珎」。秩父市で天然銅が採掘されたことがきっかけで日本初の通貨が誕生したことに由来。現在、市内で2億円分が流通している

特筆すべきは、ボランティア登録者の年齢層。60歳〜80歳が中心で、最高齢は90歳の方もいる。つまり、アクティブシニアの活躍の場となっているのだ。「秩父エリアには3万人の高齢者がいて、そのうち要介護認定者が5000人。逆に考えると2万5000人は元気なお年寄りがいるということです。その方たちが週に1時間でも2時間でも地域や困っている人のために貢献できると、生きがいを感じられ、地域との接点をもつことができる。困っている人も助かる。そこに街の住人同士の絆も生まれる。そんな全員にメリットのある仕組みをつくりました」と島田さん。
実際、登録者の声を聞くと、ボランティア活動を通じての地域貢献やコミュニケーションにやりがいを覚え、長く続いているようだ。現在は141名が登録し、開始当初は月に10件程度だった依頼も今では約2倍に。ほぼ毎日稼働するほどまでになった。この取組みにより、援助が必要な高齢者の日常も豊かになり、サービスの担い手も受け手も、あらゆる高齢者にメリットをもたらしている。

 

個店と高齢者がともに笑顔になれる取組みを

【買い物弱者支援】出張商店街 楽楽屋

「買い物弱者支援」の取組みとして挙げられるのは、過疎地や高齢者施設へ商店街の個店が週3回出張販売を行う「出張商店街楽楽屋」だ。島田さんは、普段自由に買い物ができない施設の高齢者たちが「こんなものまでもってきてくれている!」と、歓声をあげて買い物をしていたシーンを忘れられないと言う。それは商人という仕事の楽しさ、喜びを改めて感じることができる体験でもあった。利用者の中には衣類すべてを楽楽屋の衣料品店で購入するようになった人もいるという。
「『楽楽屋』の『楽』は買い手も売り手も両方とも楽しいという意味が込められているんです」と島田さん。このように、同商店街の事業は、店主たちにもメリットをもたらすものとなっている。

地域コミュニティの形成を促す「まるごと大家族」もそのひとつだ。これは、月に一度、商店街の飲食店を貸し切って、地域の人々みんなで会食を行う試み。ワンコイン(500円)のメニュー2種類から好きなものを事前に選び、家族単位で会食に参加する。取材当日も満員の大盛況で、複数の家族間を横断して会話が弾み、実ににぎやかで笑顔あふれる時間となった。
「日常のなかでは外出機会が減って高齢者のコミュニケーションが不足しがちになります。そこで、食事というコンテンツを入れることで、自然とコミュニケーションが活発化し、世代を超えた地域住民同士の絆が強まるんです」

そう話すのは、取材当日も現場を切り盛りしていた同商店街振興組合理事長の小泉貴之さん。同時に、飲食店にとってはメニューと店の雰囲気を伝える絶好の機会。新たな顧客の創出や、一度足が遠のいていた客の呼び戻しなど、メリットも大きい。


 
       左から、みやのかわ商店街振興組合 前理事長 島田憲一さん、みやのかわ商店街振興組合 専務理事 安田俊樹さん、
       みやのかわ商店街振興組合 理事長 小泉貴之さん

次々とアイデアを実現し、“お得意様”づくりを促進

     

「まるごと大家族」での一幕。飲食店から足が遠のいていたという高齢者もこれがきっかけでまた店に通うようになったそうだ

元気な高齢者も、そうでない高齢者も、そして商店街も、すべての地域ステークホルダーに元気を与えるみやのかわ商店街の取組みからは、高齢化社会に対するネガティブな雰囲気は一切見られない。「お年寄りがもっと輝ける環境をつくると、元気なお年寄りと接する商店主も、高齢化なんて全然怖くなくなる。むしろウェルカムだ、と(笑)。すると、商いの持続性に対しての安心感が生まれるんです」 と島田さん。それゆえ、同商店街では全国の商店街を悩ます「後継者不足」や「空き店舗問題」はほとんど見られない。

「地方の個店にとって大切なのは〝お得意様〞。末永くお付き合いをしていただけるお得意様こそが我々の個店を支えてくれる。高齢者を含むお得意様を大切にし、月に一人でも増やせていければ、個店も商店街も衰退することはないはずです」

高齢者を街に呼び込む仕掛けだけでなく、次々と新しい企画を打ち出しているのも、お得意様づくりの一環だ。たとえば30年以上続く「ナイトバザール(夜市)」では、毎回違ったイベントコンテンツを用意し、「次は何をするんだ?」という期待感を醸成している。

2カ月に一度開催される「ナイトバザール」。毎回異なるコンテンツを発信し、市内外から多くの来街者を集める

こうした、人々の目を引くような多くのアイデアこそが、みやのかわ商店街の生命線だ。
「もともと大きな予算がないなかで、勝負できるのは自分たちのアイデアだった」との島田さんの言葉にうなずくのは、30代で専務理事を務める安田俊樹さん。「まるごと大家族」運営の中心メンバーでもある。
「若手でも、出したアイデアは基本的に否定されず、実現に向けて周囲の方々がサポートしてくれます。そうして小さなことでも成功を収められると、達成感とモチベーションが生まれる。仮に失敗しても経済的な損失は少ないので、恐れずに前を向ける」(安田さん)
自由闊達に意見を言える風通しの良い組織のなかで、果敢なチャレンジ精神は次世代にも受け継がれているようだ。

「自分たちが苦労して取り組んだことで、商店街が少しでも素晴らしい場所に変わっていくことが、単純に楽しいんですよ」と、島田さん。商店街自体が楽しむことで、地域が明るくなる。そして信頼や絆が地域に生まれ、「お得意様」につながっていく。そんな、好循環の中で、みやのかわ商店街は高齢化社会としなやかに伴走している。

 
 
最近では秩父市がアニメの舞台にもなり新たな観光資源も。地元住民だけでなく観光客へも目配りした活性化策を進める


【COLUMN】スタッフが語る!おたすけ隊の醍醐味

ボランティア・新井常夫さん

運営・柴田克美さん

多様な人材によって支えられている「ボランティアバンクおたすけ隊」。かかわる人々も、それぞれがやりがいを感じながら積極的に取り組んでいる。

10年以上ボランティア活動を行っている新井常夫さんは、「60歳で定年退職したんですけど、暇を持て余して(笑)。それなら地域の役に立てることを、と始めました。今までいろいろなお手伝いをしてきましたけど、家にいては出会えない人と知り合えることが楽しいですね。作業が終わった後に、『お茶でも飲んでいってください』と言われて、世間話をしたりね。感謝されることもやりがいになる。それに、健康でいられるのもボランティアで身体を動かしているからだと思います。なにより、お酒がおいしい(笑)。和同開珎を使ってお酒を商店街で買って帰り、晩酌するのが今の楽しみです」と喜色満面に話してくれた。

また、多様な依頼を整理し、ボランティアのマッチングを行う事務局員の柴田克美さんは、運営ならではの醍醐味を語る。「利用者様の感謝の声をボランティアさんに伝えると、みなさん本当にうれしそうにしてくれますし、実際、ボランティアを始めて見違えるほど明るくなった人もいます。私自身も運営をとおして、商店街や地域について考えたり、積極的にかかわるようになりました」
おたすけ隊は、利用者を助けるだけでなく、かかわるすべての人に温かい感情をもたらしているようだ。

               秩父エリアの観光拠点のひとつとなっている「ほっとすぽっと秩父館」。
               「おたすけ隊」の事務局もこちら

 



 
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2018 Autumn(秋号)に掲載されています。
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