facebook page

全国の魅力的な商店街をつくるための取り組み事例をご紹介します! 商店街活性化事例レポート

商店街の活性化の“その先”をめざして 唯一無二の魅力をつくる! 地域資源 地域振興 販売促進 情報発信 個店活性 コミュニティ その他

活性化に向けた取組みは、持続的な発展が大切だ。そこで、かつて注目を集めた商店街の取組みが、現在、どう進化を遂げているのかを追跡取材した。

【組織づくり】
平成24年度 繫盛店づくり支援事業 他
繁盛店づくり支援事業、まちゼミ研修事業を経て
店主たちのモチベーションが向上し、地域連携が進んだ

新たに立ち上げた組織 
⇒ ひなび大曲有限責任事業組合(LLP)

商店街名 花火通り商店街/秋田県大仙市

「ひなび大曲」メンバー(全14人)左から、花火通り商店街 会長「黒澤時計店」店主 黒澤 輝さん、「豊月」店主 後藤 稔さん、「ミンカ」店主 佐藤 美博さん、「和装はきもの・ 小物 加藤」店主 加藤 真吾さん、花火通り商店街副会長 「菓子司つじや」店主 辻 卓也さん

     

JR大曲駅の正面に見える、大きなアーチが目印


「大曲の花火」で有名な商店街が、1年のうち花火の日以外の364日も魅力的な街でいたいという想いを込めて取組みを開始してから早10年。
'14年には新しい組織を立ち上げ、「毎日大曲」ブランドを興す。走り続ける組織の今を追った。

蔵をリノベーションして 新たな拠点を創出

トタンに囲われた質素な外観とはうらはらに、中には重厚感溢れる蔵が。蔵の中にはメインテナントの「ミンカ」が店を構える

 JR大曲駅前にある花火通り商店街の入口からメインストリートを歩いていくと、少し奥まったところにトタン板で覆われた一見古びた木造建築があるのに気づく。「毎日大曲」と書かれた看板を掲げるその建物は、商店街の有志が立ち上げたまちづくり会社「ひなび大曲有限責任事業組合(LLP)」が、’16年3月に商店街の集客・交流拠点としてオープンしたものだ。

「毎日大曲」は、ひなび大曲のメンバーの一人が経営する日用雑貨店「ミンカ」をメインテナントに据え、交流スペースと「毎日大曲」のオリジナル商品販売スペースとを同居させる形でつくられている。80年前に建てられた薬局の内蔵(うちくら)を改装してつくられたこの建物には、〝ひなびた土地の暮らしや伝統の中にこそ存在する美しさや豊かさを伝えたい〞という、メンバーの想いが集約されている。

「毎日大曲」はオープン以来、マスコミやSNSで多数取り上げられ、訪問者数、売上ともに順調に推移させている。県内および近県からの日帰り客だけでなく、週末や祝日には東京など遠方からの泊まり客も。「内蔵はこの地方の文化です。昔はどこの町でも見かけた蔵の雰囲気を残したこの建物に、年配のお客さまは懐かしさを、若い世代や外国人のお客さまは、そのレトロ感をお洒落だと感じてくれているようです」と同商店街の黒澤輝会長は語る。

「毎日大曲」はいわば商店街の導入部だ。ここを訪れる人々は、「ミンカ」の店主佐藤さんとの会話をきっかけに、他の店へと流れていく。その組織力を発揮して、来街者を回遊させる拠点としての役割も担っているのだ。



今までの活動から生まれた 新しい組織

「毎日大曲」ブランドの商品。ストーリー性のある逸品が並ぶ。左から幻の銘酒「人丸」とその甘酒「小丸」、日本製手持ち花火「毎々花火」、雄物川の「さけジャーケー」、コーヒー「毎日大曲ブレンド」

 花火通り商店街は’08年に、「地元の親子三代がともに楽しく暮らせるまちづくり」「外からの来街者にとっても魅力あるまちづくり」を目標に掲げ、「土屋館(どやだて)わいわい広場」(街なかマルシェ)、「花火前夜祭」(現・花火ウィーク)の開催や、ご当地グルメ大曲納豆汁のPR活動など、大曲の文化や暮らしに寄り添う取組みを継続的に行ってきた。

’12年以降は、支援センターの繁盛店づくり支援事業、まちゼミ研修事業などを相次いで活用。「繁盛店づくり」の実践でそれぞれの個店力に磨きをかけ、「まちゼミ」の開催で商店街内外の連携を深めていった。こうして内外でコラボ企画が次々と生まれるようになり、地域全体としての活性化の動きもより強く意識されるようになっていく。

 そして’14年、有志たちは、今までの取組みの効率化と組織力の強化を目的に、まちづくり会社「ひなび大曲」を設立。将来的に大曲を舞台とする映画を制作する、という大きな目標のもと、その第一歩としてオリジナルブランド「毎日大曲」の開発とその拠点づくりに着手した。

なじみある商品の“復活”で 地元の潜在需要を喚起する

’17年9月現在、「毎日大曲」として開発された商品は全10種類。それらは単に観光客用の土産物ニーズを満たすものではなく、大曲らしさを十二分に盛り込みながら、365日(毎日)の生活に彩りを添えてくれる商品だ。「地元の人たちにも購入してもらえるようなちょっとだけ贅沢な〝日々使い〞の商品を開発しなければ、長期的な売上につながらないし、商店街に足を運んでもらえません。ましてや、そういう普段使いの中にこそ、アピールしたい大曲の豊かさがあるのです」と、同商店街副会長兼ひなび大曲の代表を務める辻卓也さん。

 SNSを通した情報発信力と購買力に目をつけて主要ターゲットを30〜40代の女性に定め、パッケージデザインは洗練されたものを、と心掛けた。

「毎日大曲」の商品には大曲の歴史や文化を具現化するユニークなものばかり。例えば、雄物川の鮭養殖漁業生産組合と共同開発した鮭の燻製「さけジャーケー」は、120年の伝統がある鮭孵化放流事業によって地元の川に帰還してきた鮭を使用。地元酒造メーカーとのコラボ商品である日本酒「人丸」は、戦前に親しまれていた幻の銘柄を復活させたものだ。

 商品開発では一般的に、新たなものを生み出すことに焦点を当てる傾向があるが、「毎日大曲」は、もともと存在していた商品をブランド化する手法を使っている。すでに製造レシピがあるため市場投入までのリードタイムを短くできる点、なじみある商品のため「地元での消費」という潜在的な需要を喚起できる点から、商品開発にかかる負荷はかなり抑えることができている。

「それでも、コンセプトをしっかり考える分、商品開発はそれほど簡単な作業ではでありません。しかし、『とにかく工夫しながら、できることをできるところから始めてみよう』という気持ちで、仲間と一緒に知恵を出し合って今後の取組みにつながるものを生み出していきたい」と辻さん。今秋には、次なる手として資源をいかしたインパクトのある新たなイベントの開催も予定している。


 日常の暮らしの中に根づく文化や歴史を掘り起こし、唯一無二の魅力として発信することで、その日常をより豊かなものへと高めていく——この街は次に何を生み出すのであろうか。


◆PICK UP◆  ↓「毎日大曲」が伝えたい

街の魅力① 人 

“ 人っこ”がいい!
温かいコミュニケーションが生まれる
 
花火通りには、若者からお年寄りまで幅広い年齢層が集まる。それは、それぞれにとって居心地の良い場所があるから。

        

左)コーヒーのスタンド・バー「FOG COFFEE」に集まる人々。仕事の後のコーヒーと、会話を楽しむ。
右)商店街のもうひとつの交流拠点「のびのびらんど」には、地元に精通した“かあちゃんたち”が常駐。ボランティアで地元の案内役も務める


街の魅力② モノ 

「売れる工夫」を凝らし 魅力的な商品を展開

個店の魅力アップを追求し、独自に商品を生み出す店も多い商店街には、「毎日大曲」ブランド以外にも魅力的な商品が溢れている。

     
 
左)「和装はきもの 加藤」の茶筒は、花火のモチーフをあしらった小粋なオリジナル商品。
右)菓子店「豊月」のレモンケーキ。バレンタインデーとホワイトデーには「ミンカ」とコラボでアレンジを加えた限定商品を出している
 

街の魅力③ 歴史

歴史ある建物が 趣ある雰囲気を作り出す
 
雄物川の川港として栄えた大曲。このエリアには、その当時の面影を残した古い建物が残っている。例えば丸子川(雄物川の支流)沿いの築125年の古民家は、今ではカフェやブティック、設計事務所などのテナントが入居する“複合施設”として機能している。レトロでスタイリッシュな佇まいは「毎日大曲」のコンセプトに通じる。

     

 
  

【COLUMN】 「毎日大曲」を拠点に 来街客が回遊する仕組みも

老舗喫茶店「MILK HOUSE」前で出会った女性ふたり組は、「毎日大曲」へ立ち寄った時に、「甘いモノを食べながらちょっと休憩するなら……」と紹介されたという。

もともと店舗同士でお客さまを紹介し合っていた商店街。

新たな拠点から効率的に来街者を回遊させる仕組みができている。







   
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2017 Autumn(秋号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。
▼▼▼
商店街活性化の情報誌「EGAO」
商店街活性化事例レポートの一覧へ